どれくらい、そうしていただろう……夕日の沈む海岸で、抱き合う男女。
唐突に冷静になった私には耐えられそうもない状況だった。
『ふ……降谷さん、離してください!!』
「嫌だ。もう少し」
『嫌だ、って……』
離してと言ったのに、更に力を込めてくる。
その強さに呻き声を出さなかった私をほめてほしい。
「やっと、手に入ったんだ……もう少し、浸らせてくれてもいいだろう?」
『うっ…………でも、少し力抜いてください。苦しいです』
それに、そんな良い声で囁かないでください……
結局されるがままになった私が解放されたのは完全に日が沈んだ後だった。
「すっかり暗くなったな」
『誰のせいだと………』
「仕方ないだろう?好きな女と思いが通じたんだ。浮かれもするさ」
『でも、ポアロでは自重してください。呼び捨てなんて論外です』
ポアロというか、不特定多数の人間がいるときは自重してくださいというと、あからさまに不機嫌になった。
「何故だ。牽制しないと、お前にいいよる輩が出てくるじゃないか」
『そんな輩居ませんから。それに私は今17で、降谷さんは29ですよ?確実に警察にお世話になる事案じゃないですか』
「俺も警察だ」
『余計アウトですよ………』
まぁ、私が1番懸念しているのは、恐らくこれから増えるであろう安室さん目当ての女子高生。
女の嫉妬ほど厄介で恐ろしいものはないと思っている。
「それに、お前にちょっかいを出してる方が、バーボンだとバレにくいだろう?」
『まぁ……それでカモフラージュになるならいいですけど……』
「危ないことに巻き込むつもりはないから安心しろ」
『あ、それについては必要であれば自分から突っ込んでいくので気にしないで下さい』
そう言うと怒られた。
でも、こればっかりは譲れないので知らんふりだ。
そもそも、それが目的で日本まで来たのだ。
今以上に仕事をしなくなれば、確実に綱吉に殺される。
私が綱吉の嫌な笑みを思い出して背筋を凍らせていると、唐突に降谷さんが話し出した。
「………俺が、大切に思った人はいなくなってしまう。だから、はじめは真昼を想う気持ちも、無かったことにしたかった」
『私は、簡単に降谷さんの前から消えたりしません。無かったことにされなくて、良かったです』
「今度は絶対に、守ってみせる。だから、隣に居てくれ」
『なら、私は降谷さんを守ります。だから、隣に置いてください』
私がそう言うと、降谷さんは目を見開き、笑った。
「やっぱり、お前は最高だ」
『降谷さんに誉められると、なんか照れますね』
「お前でも照れるんだな」
『あ、それは酷いやつですよ』
「わるいわるい」
わかった、降谷さんは"わるいわるい"と言うときは絶対謝る気がないんだ。
そんな事を思いながら、車に戻る降谷さんの後を追った。
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