家に帰り着いたのは、日付を跨いでからだった。
まぁ、私は乗ってるだけで尚且つ爆睡。



『あれ、私嫌な奴じゃ………』

「何がだ?」

『いや……降谷さんに運転させて私は呑気に眠りこけるなんて、嫌な奴じゃないかと思っただけです』

「普段熟睡できないお前が、俺の前では寝るなんて、こんな嬉しいことはないだろう?」

『………私、熟睡出来ないなんて言いましたっけ』

「さっき教えてくれた正体が本当なら、気が休まることが無いんじゃないかと思ってかまをかけたんだが…………まさか本当だとは思わなかったな」


嵌められた!!
いや、別に隠してるわけじゃないけど、なんか嫌なバレかたしたな。



『降谷さんって、人の粗探し好きですよね………』

「それが仕事みたいなもんだからな」

『それを私相手にしなくても……』


降谷さんの近くにいると秘密が全部露見しそうな気がする。
まだバレる訳にはいかないと、気を引き締める。



「そんなに身構えなくても良いだろう?」

『もう降谷さんの前で寝たりしません』

「それは困るな」


そんな軽いやり取りをしたのち、車を降りて別れた。







* * * * * *



翌朝、案の定寝坊した私はのんびりとポアロに向かっていた。
雲ひとつない青空を見上げながら、今日のモーニングはなんだろうなぁと考えていた。

ポアロのドアを開けると、居たのは梓さんだけ。



『おはようございます、梓さん』

「おはよう、真昼ちゃん。今日も寝坊かな?」

『正解です。週明けって、どうも起きれなくて』

「真昼ちゃんはいつもだと思うなぁ」


学校にはちゃんと行かなきゃと、言いつつもモーニングの準備をしてくれる梓さん。
カウンター越しに話をしていれば、店のドアベルがなる。

こんな時間にお客かな?と思って目を向ければ………



『あ、安室さん……!?』

「おはようございます、真昼。やはり、寝坊しましたね」

「やっぱりってどう言うこと……まさか!!」

「えぇ、そのまさかですよ」

『待って、2人で納得しないで下さい。絶対勘違いしてますよね!!』


梓さんが勘違いをすると被害が拡大してしまう!!
降谷さんはもう隠す気はないらしい。
やっぱり私の話聞いてなかった………

もう、この2人の会話についていけない。
私はモーニング平らげる方を優先した。



『安室さん、梓さん何を吹き込んだんですか?』


梓さんが表の掃除をしている間に、降谷さんに問う。



「吹き込んだなんて、人聞きが悪いですね。貴女が特別な存在です、と伝えたまでですよ」

『………そーですか』

「不機嫌ですね?」

『そりゃ、人の話聞いてない人がいるもので』

「聞きましたが、約束した覚えはありませんからね」


屁理屈を並べる降谷さんに、ため息しか出てこない。
これ以上ここにいるとHPが減りそうなので、学校に向かうことにした。

会計のために、伝票を手に取ろうとしたが、空を切った。



『安室さん?』

「ここはご馳走しますよ。これから厄介事に巻き込んでしまうお詫びです」

『巻き込む前提ですか………じゃぁ、遠慮なくご馳走になります』


安室さんがケーキを作り出したらそれも報酬にいれてもらおうと考えながら、ポアロを出た。





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