コナンside


ポアロの前を通りすぎようとした時、店内で安室さんと真昼さんが親しげに話しているのが見えた。

「(あの2人、そんなに仲良かったのか……?)」


疑問と少しの好奇心で俺は店内に足を踏み入れた。
ドアベルが鳴ると2人は会話を中断し、こちらに目を向ける。
入ってきたのがオレだとわかり、真昼さんが手招きする。


『君が1人って珍しいね?探偵団の皆は?』

「博士の家でゲームするんだって」

『コナン君は行かないの?』

「遅れるって言ってるから大丈夫だよ!!」


カウンターの、真昼さんの隣に座りながら答える。
まぁ、実際は早く来いと言う催促のメールが届いているのだが。


「コナン君は何飲むかい?」

「じゃあ、オレンジジュース!!」

「了解」

安室さんに飲み物を頼むと、真昼さんが食べているケーキもついてきた。


「安室さん?僕ケーキ頼んでないよ?」

「メニューに加えるケーキの試作品なんだ。良かったら君の感想も聞かせてよ」

『美味しいからコナン君も気に入るよ』

「本当に真昼……さんはケーキ好きですね」

『ケーキは好きですけど、安室さんの作ったのはそこら辺のケーキ屋で売ってるのより美味しいと思ってますよ』


…………あれ?
まだケーキもオレンジジュースにも口をつけていないのに、金平糖を口の中で転がしている気になった。
そうだ、ここの雰囲気がどことなく甘いのだ。
恐らく原因は…………


「真昼さんは本当に美味しそうに食べてくれますね」

『美味しいのに苦しげな表情なんて浮かべては勿体ないですから』

「まぁ僕としては自分の作ったものを貴女が食べてくれるだけでも十分だと思っていますよ」



この2人だろう。
俺がいることを忘れてるんじゃ……と思うくらいには2人の世界に入り込んでいる。


「ねぇ、2人って………付き合ってるの?」

甘い雰囲気の中、堪えきれずに尋ねれば、2人は一瞬目を見開いたあと、見たこともない優しげな表情を浮かべた。


『安室さんの事は好きだけど、付き合ってないよ』

「そうですね……僕も真昼さんの事好きですが、付き合ってはないですね」

「…………え?」


想定と違った返答に、それ以外言葉を発する事ができずに固まってしまった。
そんな俺を見た真昼が言葉を重ねてきた。


『両思いだから付き合っているって言うのは安直じゃない?』

「いや、2人は両思い以上に見えるし……」

「ま、大人には色々あるんだよ」

『そう、色々。あ、この話は蘭達にも内緒ね。バラしたらコナン君の恥ずかしい秘密を蘭に送っちゃうからね?』


何をバラされるのか結局教えてくれないまま、ポアロを出て博士の家に向かう。
あの2人が付き合わないのってやっぱり……安室さんが公安だからなんだろうか……







* * * * * *



「真昼?なぜ、コナン君には付き合っていないなんて言ったんだ?」


そう、私と零さんは付き合っている。
それなのにさっきはコナン君相手に否定したのを疑問に思ったのだろう。
それなのに、話を合わせてくれるとは流石だ。

『え、面白そうだったから……?』

「…………なるほど。コナン君は君のオモチャにされたのか」

『人聞きの悪いー』

「でも、蘭さん達は僕らが付き合っていると知っているだろう?すぐばれるんじゃないか?」


零さんの言うとおり、コナン君にぶつけられた質問の答えについては、既に皆知っている。
だから、蘭でも少年探偵団の誰かにでも聞けばすぐに正解にたどり着くのだ。
なら、何故そんな回答をしたのか。


『自分だけが知っていると思った状態で、他人が本当の事を口にする。そうすればコナン君は自然とその真意を確かめるでしょ?』

「………その時周りから憐れみの目を向けられるって訳だ」

『そいうことです。できれば、私の目の前で起こってくれたら最高なのになぁ』

「さすがにコナン君に同情を覚えるよ」

『零さんだって、楽しそうな……少し悪い顔してますよ』

「でも、真昼は好きだろう?」


私は今の自信満々な表情をしている彼が1番好きだ。
でも、正直に言うのは癪なので誤魔化すように食べかけていたケーキを口に運んだ。





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