私が休んでいる隣の柱で、おじさまというかコナン君が推理を話し出した。
そういえば、証拠のこと言ってないなと思ったので、零さんに声をかけた。
『零さん』
「なんですか?大人しく……」
『犯人の…証拠なんですけど、運が良ければ奈々さんに送られたマニキュアの瓶が入っています………もし無くても、ポケットの内側に、私の血か……マニキュアが付いているはずです』
「………分かった、お前はここで大人しくしていろ」
零さんはそういうと私から離れて、犯人である沢木さんに近付いていった。
とりあえず、仕事は終わったと気を抜く。
どうやら瓶が入ったままだったようで、そのまま動機もペラペラと話し出した。
「あとはここが崩れ落ちて、村上の行方は掴めず、迷宮入りになるはずだった」
「白鳥刑事!!沢木さんを取り押さえるんだ!!」
焦ったおじさまの声と、ヤバイというコナン君の声が聞こえたと思ったら、力強く腕を引かれた。
そしてナイフを首に突きつけられ、人質になったのを理解した。
「ハハッ!!皆動くな!!動くとこの子の命はないぞ!!」
「真昼!!」
零さんの焦った声が聞こえる。
心配させたくないが………この建物は崩壊する。
それなら皆をヘリポートまで誘導した方がいいだろうと思い、取り敢えず言うとおりにする。
『(あーあー頭がぐらぐらする………)』
周りの緊迫感と差のある自分の頭に笑ってしまう。
沢木さんは頭上を飛ぶヘリに降りてくるよう叫ぶ間に、零さん達も到着した。
「真昼!!」
「真昼姉ちゃん!!」
「来るなー!!来るとこの子の命はないぞ!!」
「真昼さんを離せ!!離さないと撃つぞ!!」
白鳥刑事の上ずった声に笑いそうになったのは私だけだろう。
沢木さんは拳銃の存在を知り、渡すように声をあげる。
しかし、そんな要求に即座に答えられるわけもなく膠着状態になる。
その間にも建物の揺れはひどく、いつ崩壊してもおかしくない。
「おい、白鳥!!俺に銃を寄越せ」
「冗談じゃない!!貴方なんかに渡せませんよ!!」
何を話しているか聞き取れなかったが、揉めているようだ。
それに、焦れったさを覚えた沢木さんが声をあげる。
「おい、そこの兄ちゃん。お前、この子の恋人だったなぁ?この子を返して欲しければ1発撃ってみろよ」
「沢木さん、なにを!?」
「ゲームさ……お前がこの子を撃つのが先か、俺がこの子を殺すのが先か」
不気味な笑い声をあげ、高らかに言い放ちながら私の首にナイフの切っ先を浅く突き刺す。
大丈夫だと伝えるように微笑んでみせた。
私を見つめていた零さんは、意を決したように銃を構えた。
「まて、安室君!!」
「安室さん!!」
私は左足を軸に右足をそっと体から離す。
それに気付いたのは零さんとおじさまとコナン君だった。
零さんはニヤリと笑い、発砲した。
「なっ!!足に当てやがって!!」
「真昼!!」
私が地面に膝をつくと、沢木さんは私を解放した。
零さん達が走ってくるのがみえたが、再び立ち上がり沢木さんの顎を蹴りあげる。
『思いっきりナイフ突き刺しやがって!!』
「真昼!?」
「真昼姉ちゃん、怪我は!?」
『痛いわ!!』
「あ……そう…」
そう強く返してしまい、コナン君の目が点になっている。
しかし、崩壊前の揺れには耐えられなかった。
「真昼姉ちゃん!!」
「全く………やっぱりお前は凄いよ」
『ありがとう……零さん』
地面に激突するかと思ったが、零さんが支えてくれたようだ。
蘭とコナン君もよってきて、無茶ばっかりして!!と怒られたが、無事でよかったと言ってくれた。
ありがとうと言い、私は零さんに抱えられヘリに乗り込む。
その直後、アクアクリスタルは崩壊してしまった。
「いやー、危機一髪だったなぁ」
「おじさん、ヘリコプター恐怖症治ったみたいだね!!」
そうコナン君に言われ、おじさまの顔が真っ青になる。
そして、頭を抱えて悲鳴を上げる。
「あ?………………うわぁぁああああ!!おろしてくれぇぇええ!!」
『五月蝿い!!望み通り降ろしてやる!!』
おじさまの悲鳴は貧血気味の私の頭を直撃した。
「真昼姉ちゃん落ち着いて!!それに、降ろすというより突き落とそうとしてる!!」
『コナン君が余計なこと言うから!!乗ってるだけで振動と音で頭に響くって言うのに!!』
「お父さん、静かに!!怪我人いるのよ!!」
暴れすぎたせいか、蘭のその声を最後に意識が途切れた。
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