アクアクリスタルでの一件から3日後。
私はいつものようにポアロにいた。
1週間は入院だと言われたが、嫌すぎると医療関係者であるスぺサタイトに文句言って退院した。
腕の傷は服を着れば隠れるため、皆の目を離れた瞬間に速攻治した。
……が、足の傷はそのままだ。



「真昼さん……自宅療養という名目で退院したんじゃないんですか?」

『病院で寝たままの生活なんて耐えられないです。それに安室さんのケーキが食べられないなんて死活問題です』

「あの日あれだけ衰弱していたくせに、1日で回復ってどんな体してるんですか………」

『輸血して寝たら治りましたー』


あの事件から零さんの私への態度に遠慮がなくなった。
ちょっとくすぐったい気もするけど………
今日は一応登校したが、久々に零さん……というか、安室さんのケーキが食べたくなって早退した。



「今日は学校に行ったんじゃないんですか?」

『気分が優れないので早退しました』

「…………本当は?」

『安室さんのケーキが食べたくて早退しました』


そういうとため息をつかれた。
その横で梓さんは私達を見てクスクス笑っている。
うん、癒しだと思うよ。



「じゃぁ真昼ちゃんどうぞ」

「梓さん、甘やかしてはダメですよ」

『ありがとう、梓さん!!』


安室さんが出すのを渋ってたケーキを梓さんが代わりに出してくれた。
嬉々としてケーキを食べる私を安室さんが呆れたように見てくるが、その目には優しさが滲んでいる。
ケーキも、私の怪我を思っていってくれているのだろう。
でも、私は好きなものだけを食べていきたい。
ごめんなさい、零さん。


「真昼姉ちゃん!?」

「体調不良は!?」

『あ……』


お約束のように、蘭とコナン君がやって来た。
私に何があったかを知っているだけ、余計に驚いているようだ。



「真昼、体調不良で早退じゃなかったの?」

「体調悪いの?帰らなくて大丈夫?」

『私の体調不良は安室さんのケーキで治るのよ』

「つまり、ケーキが食べたくて仮病使ったと…………」

「真昼姉ちゃん………」


私の言葉に呆れる蘭とコナン君。
2人は私の姿が見えたから寄っただけらしく、すぐに帰っていった。
梓さんは表の花壇に水やりに行き、店内には零さんと2人になった。



「何故、足の傷はそのままにしているか聞いても?」

『安室さんからの愛の証だからね』


そう言うと、少しは拗ねたような表情を浮かべ、言葉を発した。



「普段、僕の愛は伝わっていないって事なんですね」

『わぁ、普段から愛されてたなんて幸せ者だねー』

「当たり前でしょう?」


いつになく、真剣な表情と声で告げられる。
それでも、少しおどけたように返す。



『リードでも付けます?』

「そんなもの、引きちぎってでも行ってしまうでしょう?」

『………必要がなければずっと飼われてあげますよ』

「そんな事はしない。真昼自身の意思で俺の元にいてほしいからな」

『零さんって、意外と執着心強いんですね……』

「お前にだけだ」


それは光栄だ、と返すと笑みを見せてくれた。
暫くはこの平穏が続くことを願った。





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