「さぁ帰りましょうか、真昼さん?」
『………はい』
私はひきつった顔のまま、安室さんに腰を抱かれて店外へ連行………誘導される。
後ろを振り返れば、梓さんが哀れむような表情で手を振っていて、つい助けてと言いたくなったが、無情にも扉が閉まった。
そのまま駐車場に向かいながらどう機嫌を取るか考えるも……
「どうしました?動きがぎこちないですよ?」
『……ナンデモ、アリマセン』
「真昼は何かしたと思ってるときは絶対片言になりますね」
『うっ……』
「これで、ある組織のトップなんて……可愛らしいですね」
この言葉で、あぁ……さっきの仕返しだ……と気付いた。
何ともいい性格をしている。
仕返しに仕返しをしたくなった私は、アメジストから教えてもらった事を実行してみることにした。
『じゃぁ……そんな可愛らしい私を好き勝手できる気分はいかが?』
鳩尾辺りに指を這わせ、零さんの目を覗き込む。
いつもなら、とてもいい気分です……と言いながら腰にまわす手の力を強めるか、頬を撫でるかするだろう。
それとも、今日の態度から見て素直に照れるのか……
反応を楽しみに零さんの目を見つめていれば、全く違う反応が帰ってきた。
「………今日の事、全く反省してないな?お望み通り、お前を好き勝手してやる」
『っん!……待って嘘でしょ!?』
腰にある手が怪しい動きをしだす。
自分の言葉には責任を持つんだなと言いながら今度こそ連行されてしまった。
* * * * * *
私がドナドナされてから1週間経った頃、少年探偵団がハイキングに行くと言う。
子供4人に対して保護者が2人……といっても実質1人では不安だと言うことで私と零さんも同行することになった。
…………だが、行き先はハイキングから緑台警察病院に変更になった。
病室の入口に書かれてある名前は………目暮十三。
「目暮……じゅうさん?」
「じゅうぞうって読むんだよ」
『目暮警部の名前十三って言うんだ……』
なんて1人で呟いていれば、既に皆病室に入ったあとで慌てて追いかけた。
中では警部の怪我の状態の話をしていた。
「おぉ、毛利君。わざわざ来てくれたのか。それに皆も」
「ちょうど皆で、ハイキングに出掛けるところだったんです」
「警部殿、傷の具合は」
「幸い、急所は外れてましたので命に別状はありませんが、数日の入院が必要だそうです」
「ねぇ警部さん。どうしていつも帽子被ったまんまなの?」
「ん?……ま、まぁいいじゃないか」
あれって確か……奥さんとの馴れ初めが関わってたんだっけ?
珍しく覚えていることに自分でビックリしていれば、白鳥刑事が現状について話し出した。
「使用されたのはハンドガンタイプのボウガンと思われます。目暮警部と知って狙ったのか、たまたま通りかかった警部を面白半分に撃っただけなのか、その両面から捜査を開始しています」
白鳥刑事の話を真剣に聞いている大人とコナン君をよそに、子供達は目暮警部に話しかける。
「なぁなぁ警部のおっちゃん。拳銃持ってたんだろ?」
「それで逃げられちゃったの?」
「ジョギング中に拳銃を持ってるわけ無いだろうが」
「それにたとえ持っていたとしても、わしは毛利君と違ってそっちの腕はイマイチだからな」
「え?お父さん拳銃上手かったんですか?」
「警視庁内でも1,2を争う腕前だったんだ」
得意なの柔道だけじゃなかったんだ……と思っていれば、横で零さんが何か呟いた。
『何か言いました?』
「いえ、警視庁内で1,2の腕とは中々だと思って」
『へぇ……貴方はどうなの?』
「警察庁で1,2といったところですね」
無駄に対抗心を燃やしたのか、事実なのかわからない言い方をする零さんから意識をそらす。
「ところで、ボウガンを撃ったと思われる場所から妙なものが発見されました。これなんですが」
「なんだこりゃ」
「西洋の刀みたいね……」
私はここに来て漸く、これが映画の話であることに気付いた。
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