今日はおそらく、アクアクリスタルに行く事になる日。
勝手に突撃してもいいんだろうけど、警部達によって来るなと言われる可能性が高い。

さて、どうしたものか……と思っていれば、珍しく安室さんから電話がかかり、ポアロに呼び出されてしまった。



『こんにちはー』

「あ、真昼ちゃん!!」

『梓さん、どうしたんですか?……と言うか、安室さんもどうしたんですか?』


私が店内に入ったとき、安室さんと梓さんの視線を一身に受け、居心地が悪く感じる。



「実はこれ……真昼ちゃんにって……」

『手紙……?誰から?』

「それが、分からなくて……」


何も言わない安室さんと、差出人不明の手紙。
どちらも恐ろしいが、まずは物言わぬ手紙から片付ける。
物言わぬが書いてはいるなんて突っ込んじゃダメ。
しかし、書いてあったのは願ったり叶ったりの事で、思わず顔がにやける。


「真昼ちゃん?」

『梓さん……今日のバイト、1人にしちゃっても大丈夫ですか?』

「え?あぁ……店長もいるし、大丈夫だけど……」

『ありがとうございます!!………安室さん、私と一緒に行ってくれますか?』


そういって手紙を差し出せば、驚いた表情になったと同時に少しの不安が見える。
大丈夫だと、安心させようと笑いかける。
少し迷ったようだが、梓さんと店長に一言断って自分の上着を持ってきた。



「真昼さん、いきましょう」

『はい。梓さん、また来ますね』

「気を付けてね……」


不安そうな梓さんに大丈夫ですよと言って店をでる。

車に乗り込むまで私と零さんの間に会話は無い上に、少し雰囲気が悪い。
車に乗り込み、誰も聞いていない状況になったところで、私から声をかけたが、零さんに遮られた。



『零さ……』

「瑞希は、何故この手紙を読んで笑った。危険なこととは思わなかったのか!?」

『それは………』

「お前に危ないことをして欲しくないと思っている、俺の事はどうでもいいのか」


零さんのあまり聞かない必死な声に、何て返事をしたらいいのか分からなかった。
なにも言えず、俯きかけた私を抱き締め、零さんは言葉を紡ぐ。


「お前にとって心配する事は、鬱陶しいのか」

『そんなことない!!』

「………!?」


声をあげたのが珍しいのか、少し腕の力が弱まった。
私は少し離れ、両手で零さんの顔を包み、こちらを向かせる。
目があったところで、零さんに語りかける。



『私が、強いのは知っているでしょう?あの組織のトップでいる位ですから。だから恐らく、本当の意味で私を心配する人はいない……』

「そんなこと…!!」

『組織のトップでいると言うことがどういう事か、零さんには分かっているはずです。私には力を貸してくれる彼等を守る義務がある。それに、私に良くしてくれる、友人である蘭や皆を守りたい。零さんの事だって守りたい。私にはその力があるんです』


零さんは私の手を上から握り、下におろす。
そして再び抱き締めてきた。



「蘭さん達がいる前では一般人でいることしかできないくせに……」

『その時は、零さんが守ってくれるんでしょう?』

「…っ!!勿論だ。絶対に」

『ありがとう……零さん』


私を抱き締める零さんの腕に一瞬力が入ったあと、解放される。
少し視線を合わせた後、アクアクリスタルへ向けて出発した。





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