きっかけは火事
家が燃えたからしばらく泊めてほしい、電話口で告げるとなんともまぁ間の抜けた声が返ってきた。
信じられないと言ったフィンクスに、火の粉を散らして燃える家と、その火を消そうと躍起になる消防士。さらには近隣住民の逃げる様子が一枚に全て収まったベストショットを送り付けた。
「おまえ、なにしたんだよ」
写真を確認した彼は呆れたように声を出した。私がやらかしたと思ったらしい。しかし火の海になるような原因を作った記憶はないので、なにもしていないと伝えれば、彼はケラケラと笑った。
「ほんとかよ、誰かの恨みかったんじゃねえの。しょうがねぇから泊めてやるけど」
鍵は開けとくからいつでも入ってこい、そしてフィンクスは電話を切った。
事情説明やらなんやら済まして、その日やるべきことを終わらせると、私はフィンクス宅へと向かった。
何度かお邪魔させてもらったその家に、しばらくお世話になりますと一礼してからドアノブを握った。
「うわ、くっさ」
がちゃりと音を立てて開けるドアの向こうから臭うアルコール臭に思わず言葉が飛び出ると、フィンクスが私の存在に気づいた。
「お、ジャイ子。やっと来たか、お前も飲もうぜ」
待ってたぜとひらひらと手を振るフィンクスはずっと一人で飲んでたようだ。おじゃましますと一声かけてからフィンクスの座るソファへと向かう。近づくにつれ足元に転がる空き缶の数が増えて思わず顔を顰めた。片付けもせずに飲んでばっかしているようだ。
「何日放置してんの?さすがに汚くない?」
「うるせぇな、いいだろ別に」
「だらしないなぁ」
へいへいとフィンクスは軽くあしらうと、それじゃあよろしくなとある方向を指差した。フィンクスのいうところに目を向けると、四五リットルのゴミ袋が置いてあって思わずため息が出た。
「私に片付けろと……」
ビニール袋に手を伸ばし、無心で落ちている缶を拾っていく。そんな私に目もくれずフィンクスはまた新しい缶をあけていた。
「そういやおまえ、ここなんもねぇけどいいのか」
フィンクスはごくごくと喉をならす。
そんなこと、前にお邪魔していたときからわかっていた事だ。
テレビとソファにローテーブル。あとはキッチンの付近にある電子レンジと冷蔵庫。もちろんあの冷蔵庫には缶ビールが沢山並んでいるのだろう。以前来た時と何一つ変わらないこの殺風景な姿に私は「うん」と頷いた。
「なくても別に困らないし」
「そうか」
缶を全て拾い集めて袋の口を結んだ。部屋の隅にゴミ袋を置いてフィンクスの隣に座ると、私も缶のプルタブを開けた。
「とりあえず乾杯。フィンクス先に飲んでるけど」
「すまん」
悪びれた様子もない謝罪に私が許すとお互い持ってる缶をぶつけた。ごくりと飲めば、冷たいビールが喉を潤した。