【急募】魔剤


カタカタカタ、タンッ。カタカタカタカタ、タタンッ。
早朝、24時間営業のファーストフード店、ボックス席。お互い黙って作業をしていたけど、私がある異変に気づきハッとする。

「レオリオ……、見て。」
「んだよ。俺はまだ終わってねぇぞ。」
「私も終わってないよ。そうじゃなくて、見て。」

人差し指でレオリオの向こう側を指すと、怪訝そうに振り返る。そうして私の言いたいことを理解したレオリオもハッと息を飲む。

「朝日……!」
「夜が明けたよ……。ちなみに今5:32。」
「あと4時間……。」

ヒクヒクと口の端をひきつらせて青ざめるレオリオ。私も似たような顔してると思うんだけどね。気持ちを落ち着かせるためにコーヒーを口にする。何杯目だっけ、これ。

「ジャイ子、今何字だ?」
「7,000弱。レオリオは?」
「やっと6,000超えた……。」
「半分かぁ……。お互いギリギリだね。」

ボックス席のテーブルには2台の持ち運び型パソコンと買ったコーヒーとその残骸。テーブルに収まらないでソファーにまで散乱してるのはレポートの資料。私達は今大学生の宿命に追われている。

「私普通に間に合いそうだったんだけどなぁ。なにがどうしてこうなっちゃったかな。」
「お前先週もそう言ってサークル行ってたろ。」
「それだぁ……。」

なんで行っちゃったかなー、と両手で顔を覆う。あぁだめだ。一度中断しちゃったから集中力が切れた。そうすると眠気が襲ってくるのも仕方ないことで……。

「ねぇレオリオ。」
「言うな。俺は認めねぇ。」
「ねむい。」
「だぁあ! 言うなって言ったろ!!」

死なば諸共精神で欲求をありのまま口にするとレオリオは髪をグシャグシャにかき混ぜる。やっぱり眠いよね。お互い相当キてる。

「なんでテスト期間最終日にこんなデカイレポートがあんだよ……。」
「悪夢だよね。」

レオリオの手を止めることに成功して満足したからゆっくり手を動かし出す。

「暗い話してるとやる気なくなるからだめだよね。もっと楽しい話しよう?」
「楽しい話ってなんだよ。」
「んー、そうだな……。あ、じゃああさってデートしようよ。」
「明後日ってところが現実的だな。」
「明日は寝る。」

レオリオのバックで街がどんどん白んでいくのが見えてやらなきゃなぁと思う。でも山頂とかでこの時間の移り変わりを見れたらキレイだよなぁとか思考が色んなトコに飛んでいくのはご愛嬌。

「待ち合わせしてー、映画見てー、ランチ食べてー、お店回ってー、って。楽しそうじゃない?」
「まぁな。」
「じゃあ決まりね! お金は全部レオリオ持ちで。」
「おい!」

流してくれないか、と心のなかでコッソリ舌を出す。今の流れならいけるかなーって思ったんだけど。

「デートでは彼氏が出してくれるものだよー。」

「んじゃ明後日遊びに行こーぜ。つかなんだその暴論。」

「言い方変えるの卑怯だよー。この前読んだ雑誌に載ってた。彼氏が払うのが多数派って。」

「お前俺と付き合ってんのかよ。」

「んーん。気の置けないオトモダチ。ああでも、あさってお金払ってくれるんだったら付き合うのもいいなぁ。」

「奢られるの嫌いな奴がなに言ってんだ。」

「ふふ。」

トロトロとゆったりとしたペースで進む会話が心地いい。でも口と同じペースで手を動かしてたんじゃ期限までに終わらないから一旦終わり。楽しい予定もできたし、もう一頑張り……。

「眠ぃ……。」
「今頑張ろうとしてたんだからやめてよー……。」

伸ばそうとした背中がふにゃんと丸まって頭をテーブルに乗せる。……単位取れるかな……。