夕暮れの決意
街を眩いほどの茜色に染め上げる、夕暮れ時。ジャイ子は師範であるウイングと、話しをしていた。
「本当に、ここを出て行くのですね?」
ひと月ほど前から、彼女は彼の元を出て行くことをすでに決めていた。彼が改めて問いかけたのは、今日がその出発の日の前日だったからである。
「はい。体術も念も、ここまで上達できたのは師範のおかげです。もちろんここを出ていっても、修行はこれからも続けていきます。」
一呼吸置いて、続ける。
「だからそろそろ自分一人の力で、やりたいことを見つけたいと思ったんです。そのためには色々なところへ行って、たくさんの経験をした方がいいだろうから」
彼女は、まっすぐ見ながら告げた。話しを聞いた彼は、微笑みながらゆっくりと頷いた。
「わかりました。ジャイ子が自分で決めたことなら、私も喜んで応援します。ただし、身体には十分気をつけてください。せっかくの自分探しや修行も、体調を崩してしまってはどうにもなりませんからね」
今度は彼女が笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。私、絶対に自分の道を見つけてみせます! 自己管理も、もう自分でどうにかできるつもりです」
明るく答える彼女を、再び彼は見つめた。
「ええ、その調子です。きみのハンターとしての活躍、楽しみにしています」
優しい言葉に勇気づけられた彼女は、瞳を輝かせながら先ほどよりも、もっと明るい声でお礼を言った。
「本当に、ありがとうございました」
押忍、と独特の挨拶を交わすと、昼間とは違った涼しげな風が二人の間を吹き抜ける。
気がつくと、茜色の空は濃紺に染まりかけていた。