カルチャーショック


「ゴ、ゴンくん!待って!」
「あ、ごめんなさいジャイ子さん!大丈夫?」

跳ねるように軽やかに山を登るゴンくんにストップをかけるとわざわざわたしのところまで戻ってきてくれる。わたしもハンターの端くれで年上なのに…。いくら最近大変な仕事を請け負ってないとはいえ、自分がむなしくなってしまう。

「大丈夫よ。わたしの方こそ待ってもらってゴメンね」
「ううん、オレが勝手に先に行っちゃったから。せっかくジャイ子さんが案内してくれたのに」
「案内なんて大したことじゃないわ。この山から見る星は綺麗よ、って言っただけだもの」

カイトくん(今は諸事情で女の子)から紹介されてゴンくんと一緒に行動するようにって数週間。ゴンくんの人懐っこい性格と太陽のような笑顔にわたしはすっかり彼を気に入り、彼もカイトくんと同期・同業のわたしになついてくれた。調査の合間にわたしはカイトくんの若い頃の話を、ゴンくんはお父さんやお友達の話をよくするのだけれど、今日のゴンくんの話は今妹さんと旅をしている親友から送られてきた星空の写真がとても綺麗だった、というものだった。
オレもキレイな星空は見たことはあるけどあんなにすごいのは見たことない!と身ぶり手振りを使ってうらやましそうに語るゴンくんにそういえば以前ここに来たとき星を見るのにいいスポットを見つけた、と漏らすとキラキラした目で見つめられた。何が言いたいかなんて明らかで、急ぎの調査でもないし手伝ってくれているお礼に、と思ったけれど自分の力不足に打ちのめされるとは思っていなかった。

「ジャイ子さんはよく星を見るの?」
「そうね、好きよ。今から行くところは夜の調査をしているときにたまたま見つけたの」
「そうなんだ!」

弾むような楽しそうな歩き方だけど歩幅はわたしに合わせてくれている。この子は将来モテるだろうなと思いながらおしゃべりすること数十分。目的の場所に着く。

「ここよ。上を見て」
「!すごい、空が広いや!」

頂上で上を見るよう促すと感嘆の声が上がって思わず微笑んでしまう。街から離れた森と川と山しかない土地で見る星空はどこも美しいけれど、ここは特に美しい。この地域は世界的に空気が綺麗だと認められていることが関係しているらしい。

「綺麗でしょう?これで冬だったり新月だったりするともっと綺麗なのよ」
「へぇー!」
「流星群のときに来るときっと素晴らしい天体ショーが見られるのでしょうね」

うずうずと興奮を隠しきれないようでゴンくんは山頂を歩き回って空を見上げている。あれは何座、あっちは何座と呟いているようで、星座にも造詣が深いのかと感心してしまう。

「ジャイ子さんも流星群のときに来たことはないの?」
「えぇ。一度来てみたいわ」
「じゃあ今度一緒に見に来ようよ!」

顔を空からわたしに向け直してにっこり笑うゴンくんに何度か瞬きをする。…ふふ、今も星を見ているのに。

「えぇ、いいわよ。約束」
「じゃあ指切りしよう!」

小指を絡めゆーびきーりげーんまんと歌うゴンくんに微笑みながら私も口ずさむ。純粋でかわいくてきらきらした子供はいいな、なんて思っていると最後に親指をくっつけて「誓いのチュー」と言ってくるから唖然とする。…若い子、コワイ。