大人と子供の境界線


夕暮れと夜の色が交わりはじめている。もう少しすれば、星空が天井を作るだろう。その前にこの少年を家に帰してやらなければ、と私は急いていた。

キルアと話していると、楽しくて時間を忘れてしまう。憎まれ口を叩かれても、「ジョーダンだって」と悪戯っ子のように笑われれば許してしまう。甘いものを食べて幸せそうにする姿はかわいらしくて、弟ができたようで嬉しくなる。それは、キルアが私を姉のように慕ってくれているからだと思う。
けれど、ふとした瞬間に見せる、狙いすましたような瞳に息を呑む時がある。私が、必死に弟だと、子供なのだと、蓋をしようとした気持ちをこじ開けるような瞳だ。
繋いだ手から伝わる体温は高い。行きはヨイヨイ帰りは怖い、のだろうか。キルアは帰りの道の足取りがいつも重くて、私が少しだけ前を歩くのだ。彼の手を引きながら。

「なあ、」

言いかけて、焦れたように口をもごもごとやるキルアは、やっぱりかわいらしい。

「そんな急がなくていーよ。別に、遅くなったって問題ないし。」
「だめだよ。キルアはまだ子供なんだから、早く帰らないと。」

私がそう言った時だ。今までとは比較にならないような力で腕を引かれ、私はぐらりと態勢を崩してしまう。
それを支えるような形で立つキルアは、私が凭れてもビクともしない。思ったよりも、彼の瞳の位置がすぐ傍にあって、胸のうちが掻き乱される。

「オレは、お前が思ってるような子供じゃねーよ。」

すべらかな頬に差し込むのは、夕暮れの残り香だろうか。それとも、私は期待してしまってもいいのだろうか。不毛だと押しとどめた気持ちをもう一度見つめてもいいのだろうか。
キルアは、あの狙いすましたような瞳をしていた。けれど瞬くたびに少しずつ不安に揺れて、繋がれていた手と同じ温度を宿していく。
私が口を開こうとすれば、キルアが言わせまいとするようにそれを遮った。

「子供なんかじゃ、ねーよ。ジャイ子。」