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カーテンを閉め切った暗い部屋の中、グラグラと揺らされる衝撃で私は目を覚ます。ほんのり差し込む強い光がお昼時だということを私に伝えていた。
両肩にかかる重圧を、力の入らない左腕で小さく払い除ける。私は重くなったまぶたに逆らわないで、ゆっくりと目を閉じた。まだ寝ていたいと主張する。
ため息をつく声が耳に入ると、柔らかい温もりがぺしぺしと私の頬を叩いた。自分のものではない、骨ばったなにか。そんな優しい刺激では、目を開ける気になれないよ。

「起きてよ、ジャイ子」

私の惰性に気づいた声は呆れを表すものだった。
右半身が布団にゆっくり沈んでいった。ベッドが軋む音をたてたのは、シャルが体重をかけたからだろう。

「予定。ほら、早く書いて」

うっすらと目を開けた私に、男は一枚の紙をチラつかせた。
長方形の黄色い付箋。起きたら書くように言われたことを思い出す。何時間も寝ていた私の喉はカラカラで、絞り出すようにして、やっと音が出た。「おーけい」と言った私の声は想像以上に舌っ足らずで、シャルは丸い瞳を楽しそうに細めていた。私もなんだか楽しくて、唾液を飲み込んで口の中を湿らせた。さらさらとした金色の髪に手を伸ばし、柔らかい毛質を楽しんだあと、彼の右頬に手を添えて、その白くしっとりとした肌をつねるように引っ張った。

「おもいよ、シャル。腕どけて」




居候のくせに私のお金で付箋タワーを買ってきた。
植木鉢を模倣したそのタワーをシャルが買ったのかと思うとなんだか信じられなくて、思わず笑いがこみ上げてくる。
テーブルに置かれた植木鉢と、目の前に座るシャルを交互に見ながら予定を考えているけれど、特にすることなんてなくて、"さんぽ"とでかでか書いた私はポールの部分に黄色い付箋を貼り付ける。細い棒に付けられた小さな紙をマジマジ見ると、シャルは「学校ないとそんなに暇なの?」とバカにするようにして言った。

「シャルだってニートじゃん」

言い返せば、「おまえよりかは忙しいよ」と爽やかに言っている。ひたいに青筋がういているようにみえるのは、私の気のせいだろうか。

「でもシャルが働いてるように見えないけどな」
「仕事は不定期にあるんだよ」

シャルは"下調べ"と書いた付箋を同じようにポールに貼った。

「下調べ?なにしてんの?」
「ジャイ子に関係ないことかなー」
「なにそれムカつくー」
「あははは」
「ねぇシャル、私、お腹が減った」
「いいね、昼飯食べに行こ」
「支度してくる」
「オーケー、コーヒー飲んで待ってるよ」

準備しようと二つの旗を掲げたタワーに背を向けた。
下調べの下に隠れたもう一枚の付箋には、小さく3470と書かれていた。私がこの意味に気づくのはもう少し先だった。コーヒーがほのかに香る部屋に戻る。シャルはちゃんと待っていてくれた。シャルがカップを傾ける様はなんだかとても美しくて、王子様のように見えた。
家を出ると真っ青な空に綿菓子みたいな雲がぽつぽつと浮かんでいる。

「いい天気だね」

きっとその日は私にとって鮮やかすぎた。私はずっとこんな風にしていたかった。私は付箋の下に隠れた記号の意味を受け入れた時、そう思った。
手に握った付箋と、リビングに置いてあるタワーだけが彼がここにいた証拠。