優しい勘違い


渡された缶ジュースは彼の体温で生ぬるくなっていた。

「これはお近づきのしるしさ。わからないことがあれば何でも聞いてくれ」
「あ、ありがとう」

初めてのハンター試験でがちがちに緊張していた私は、思いがけない親切にすっかり感動してしまった。経験者、そして年上の余裕を見せつけたトンパさんは、私が小娘でも侮ることなく普通に接してくれる。爽やかな、人懐っこそうな笑顔が印象的な人だった。

プルタブを引っ張って、私は早速乾いた喉を潤す。
口内に広がった甘みは柑橘系の物だ。後味がほんのり苦いが、その苦みがちょっぴり大人になったような気分にしてくれる。
あのしがらみだらけの流星街から勢いだけで飛び出してきたのはいいものの、結局世間での私の立ち位置は身寄りのない子供でしかなく、これまでずっとまともな扱いをされなかったのだ。だから身分証となるライセンス目当てにこの試験に参加したのだけれど、あぁ、ほんとうに来てよかったな。

「トンパさん、遅れてる受験者を励ますためにこんな後ろの方に残ってくださるなんて優しいですね」
「えっ?あ、あぁ、新人にはキツイと思うが、頑張ってほしいしな」
「はい、私も頑張ります!」

一次試験はマラソンだ。私の顔を見たトンパさんはなぜかぎょっとしているように見えたけれど、その心根はやっぱり優しい。これが包容力ってやつなのか。きっとこれまで何回も試験に落ちたのは、この優しさのせいなのだろう。

「私、トンパさんと一緒に合格したいです。トンパさんの優しさ、見習いたいです。だからできる限りお手伝いしますね」
「お、おう……ありがとな」

どこかぎこちなく頷いたトンパさんは、褒められて照れているのだろうか。そういうところもとっても可愛くて好感が持てる。おじさん相手に可愛いってのもヘンな話なんだけど……。

私の試験はまだ始まったばかり。
隣でふうふうと走る彼を見ながら、幸先は良さそうだ、と思った。