きみの安らぎを願う
上下左右どこを見ても真っ白な病室。その空間が私はどうしても好きになれなかった。
しかし近頃はそんな空間も、あたり一面が真っ赤に染まる夕刻の時間だけは、好きになれた。
もっと外の景色を見たくなって、カーテンを開けようとしたときだった。扉のノック音が部屋に響く。
「どうぞ」
私は音の方へ目を向け、入室を了承する返事をした。すると扉は開き、ノックした人物が部屋に入ってくる。
「体調は大丈夫か?」
お見舞いに来たのは友人である、クラピカだった。
「ええ、今のところ安定しているわ。忙しいのに来てくれてありがとう」
自分も、仕事が忙しくて大変だろう。そんな中、こうしてお見舞いに来てくれたのはとても嬉しくもあり、ありがたかった。
挨拶もそこそこに、私は先程しようとしていたことを思い出して、口を開いた。
「それより、ちょうど良いところに来たわね! この時間、病室から夕焼けがとてもよく見えるのよ」
窓際に近づき、カーテンを開けた。眩しい光が差し込み、病室を赤く染め上げる。
「あなたもこっちへいらっしゃいよ」
クラピカの方を向き、自分の近くへ来るように誘った。ベッドの近くにあった椅子に荷物を置いた彼は、ゆっくりと私の横に近づく。
「……ね、綺麗でしょ?」
外を見る彼の口元が、わずかに緩んでいるように見えた。
「ああ、こんなに綺麗な景色を見たのは久しぶりだ」
私は再び、ちらりと彼を盗み見た。こうして改めて見ると、以前に会った時よりも些か疲れているような印象を受けた。
「クラピカ……あのさ」
━━あなた、ちゃんと休めている? 疲れているんじゃない?
そう聞こうと思ったが、言葉にはしなかった。責任感が強く、なんでも一人で背負いこんでしまう人だ。会わない間にきっと、私が想像できないような、たくさんのことがあったのだろう。
「ジャイ子、どうかしたのか?」
言葉を出さない私を、不思議そうに彼が覗き込む。今は何か言うべきではないかもしれないと判断して、首を横に振った。
「……なんでもないわ。今日はありがとう。久しぶりに会えて嬉しかった」
今日のことで、クラピカの気分が少しでもやわらぎますように。姿を隠しかけた夕日にそう願った。