最期


(詳細描写なし暴力・死ネタ)


コトリ。振り返ることのできない背後で時計の針が動く音がする。
私が感じた1秒を、捕らえた側である目の前の男は正しく理解することなんてないのだろう。人殺しと罵ったところで、その言葉に含まれた本当の畏怖や悲しみを分かることもないのだろう。
「喋るつもりはない、か」
家族を殺した相手に返事をするのも忌々しい。だから、この集団の首謀者だろうそいつの足元に唾を吐き捨てる。切れた口内の血が混じったそれがブーツの先に届いたところで気に留める様子はない。
あと、2秒。それを待てば私の発の条件が揃う。捕らえられたここからひとまず逃げることができる。
あと、1秒。
「殺れ」
慈悲などない。
家族を殺した時も、私を拷問し続けた時も、眉一つ動かすことなく見ていたそいつが微かに笑った。

私の念能力を知っていたのか。

悟ったと同時に細い念糸が私の首を落とし、私は自分の血肉が飛び散った部屋をぐるぐると見渡しながら最期に思う。
なんて恐ろしく、なんて綺麗な笑みだろう。額の十字に、絶望と憧憬の視線を残した。