Morbid Dependence


(流血表現/厭らしい雰囲気)


くるり、くるり。右手で回す折りたたみナイフをぼぅっと見つめる。一回回って開き、二回回って閉じる。三回回って開き、四回回って閉じる。ただ開閉を繰り返しているようだけどそうじゃない。回る度、薄く私の指先を傷付ける。一回一回は大した傷じゃないけど、同じ場所を傷付け続ければ立派な切り傷になって赤い血が滲み出る。それでも止めずにナイフを回し続ければあっという間に傷は深くなり、ナイフが肉を裂く焼けるような鈍い痛みと血の温かさとは真逆に冷える指先のちぐはぐした感覚に口元が歪む。このまま続ければ爪まで届くかな、なんてうっとりと考えて、油断した。

「あぁ、またこんなにして」
「!」

後ろから右手を強い力で取られてナイフがからんと音を立てて落ちる。でもそれを目で追わず、私の手を取った男を睨み付ける。その男は責めるような科白とは裏腹に楽しそうな笑みを浮かべて血が流れる私の指を見ている。手から逃れようと力をこめようとしたが、向こうの方が速かった。

「美味しそうだ」
「いっ…!!」

ぴちゃりという生々しい音と、指を滑るざらざらとして生温かい感触。笑みを消して伏し目がちに血を舐めとる姿は男のイメージや容姿と相まって酷く厭らしくて、痛み以外の理由も含めて顔を歪める。
そんな私に気付いているだろうに男は動きを止めず、あまつさえ血の垂れた腕にまで舌を這わし、仕上げとばかりに指先をじゅっと吸う。それには反応を抑えられず、思わず体が跳ねる。男は満足気に笑って手を離す。目の奥に欲の色が滲んでいるのは言わずもがな。

「…変態」
「キミが一番初めに言ったんだろう?舐めれば治るって」
「アンタが舐めても毒にしかならない」

手を守るように引っ込めて吐き捨てる。いつもこう。人が悦に浸っているのに毎度毎度邪魔して…。

「薬だよ」
「なにバカなこと言って…」
「だって、キミはもう自傷行為の後ボクの“治療”を受けないと満足出来ない。キミにとってボクは麻薬だ」

私の言葉を遮って自信たっぷりに言い切る男に反論したいけど、言葉が出てこない。そう、正しい。私はこの男に依存し溺れている。認めたくないだけで知ってた。私が知っててこの男が知らないはずがない。それをわかっててやめない私もこの男も、揃って末期だ。…いや、この男は元々末期。やめようとすればいつでもやめられる。囚われているのは私だけ。

(悔しい、悔しい、悔しい…!)

どうして私だけ、と恨みをこめて睨み付ければ男の欲の色が濃くなりそのまま血の味がするキスをされた。
強引で激しいくせに屈んでいて、それが私の悔しさを助長させた。