無邪気な少女
この仕事のを選んだのは、雇い主の護衛ほどとはいかなくとも、お給料がそこそこ良かったから。そして、その娘であるお嬢様がとても可愛かったから。
大きな玄関の門に立派なお屋敷、ノストラード館。そこが私の勤め先である。屋敷や庭の掃除、食事の用意など、その他雑用が私の主な仕事であった。そのため、雇い主とはあまり顔を合わすことがなく、あったとしてもお見送りやお出迎え際のときくらいだった。
しかし、今日だけは朝から少しバタバタしていた。というのも今日から数日間、お嬢様が侍女や護衛の人たちと、ヨークシンで開催されるオークションに参加するために、お出かけになるからである。玄関前に空港へ向かうための車を用意し、そこに彼女らの荷物を詰めていく。
「よし……これで全部詰められたかな」
トランクを閉め、運転手とダルツォルネさんに準備ができたことを伝えた。続いて侍女にもそのことを知らせようとしたところ、お嬢様に背後から声をかけられた。
「ねえねえ、ドラ美! 見て見て! ヨークシンのオークションの前にお宝ゲットしたの!」
彼女は硝子玉のように綺麗な瞳を輝かせて、私に何かの生物の頭蓋骨を見せた。年頃の女の子にしては、風変わりな趣味をお持ちだということを以前から聞いていた。だから今更驚きはしないが、とても不思議な気持ちになる。
「おめでとうございます。これでまた一つ、宝物が増えましたね。その調子でオークションも頑張ってください」
さあこちらへ、と彼女を車に誘導して後部座席のドアを開ける。すると彼女は、上機嫌な様子で返事をしながら乗った。その後に、侍女やダルツォルネさんも続く。
私は自分と執事以外の皆が乗ったことを確認し、ドアを閉めた。
「オークションが終わって帰るときには、オレか護衛の誰かが連絡を入れる。そうしたら食事等の準備をしておいてくれ」
ダルツォルネさんが車の窓を開けながら言った。
「かしこまりました。お気をつけて」
彼の指示を承諾し、私はその場を離れて玄関の門を開けにいく。
「行ってらっしゃいませ……ネオンお嬢様」
屋敷を出て行く車を見送る。
━━執事と二人きりの数日間は、酷く退屈になりそう。そんな予感がした。