希望、常に前進


(未来の話)


あんまり舗装されていない道を登ってるせいでガタン、ガタン、と車椅子が揺れてちょっぴり腰がいたい。でもつらいとかいたいとかをガマンするのは慣れてるし、車椅子を押すレオリオ先生の方がきっと大変だから何も言わずにきょろきょろ周りを見る。病院の裏の丘だってことはわかるけど、いつも窓から見える景色でしかなかったからこんなに急で小石があるなんて知らなかったなぁ。

「うし、着いたぞドラ美!」
「え、わぁ!」

随分登ってきたなぁと首を捻って後ろを見てたけど、レオリオ先生の声で前を向いて、びっくりした。お花畑だ!

「すごいっ、きれい!」
「だろぉ?今が見頃らしいぜ。」

ぐっと身を乗り出してちょっとでもお花に近付こうとするとレオリオ先生が車椅子を押してくれる。ピンク、赤、オレンジ、黄色、白。小さくてかわいい花びらがたくさんついてるお花は見覚えがあった。

「ねぇ先生。これってガーベラ?」
「ん?んー、そう、なのか?」
「病院でよく見るからそうだと思うよ。先生、よく見るお花くらい見分けられないとお嫁さんもらえないよ?」
「ぐぅっ。」

胸に手をあてるレオリオ先生を見てくすくす笑う。でもレオリオ先生は優しいから、お花が見分けられなくても素敵なお嫁さんがもらえると思うな。

「こんなにきれいなところがあるならもっと早く知りたかったなぁ。」
「ごめんな、連れてきてやれなくて。」
「ううん、今日連れてきてくれただけで嬉しい!」

レオリオ先生が悪いんじゃないのに苦しそうな顔をするから首を横に振ると、レオリオ先生はあっ、と言って笑顔になる。お医者様って、大変。

「天国もこんな風にきれいなところなのかな。」
「っ、ドラ美。」
「火葬だから灰になっちゃうけど、でも天国に行けたらいいなぁ。」

きっと私はそろそろ死んじゃうんだ。だからこうやって何年かぶりに病院から出れたんだと思う。病院ってそういうところだから。

(本当に、こんなところだったらいいな。)

ガーベラは色んな人がお見舞いに持ってくる。理由はわからないけど、きっといい意味があるんだと思う。そんなお花がたくさんあるところなら、私はしあわせ。

「違う、そうじゃねぇ!ドラ美は死なねぇ!」
「先生、私大丈夫だよ?」
「治療法が見付かったんだ。」

ちりょうほう。
前に回ってきて屈んで私をしっかり見つめるレオリオ先生の目はとっても真剣で、でも、治療法。

「難病ハンターが知り合いにいて協力を頼んでたんだが、ようやく見付かったんだ。ここにつれてきたのはそれを報告したかったのと、元気になってもらいたかったからだ。ここんところ塞ぎこんでただろ?心が元気じゃねぇと体も元気にならねぇからな。」

なんて返したらいいのかわからなくて、私は今困った顔をしてると思う。先生がうそをついてるなんて思ってないけど、なおるの?だって、ずっと病院にいて、車椅子でしか動けなくて、死んじゃうと思ってた。せめて天国に行けたらって、それでいいって。怖いけど、誰もなんにも出来ないからって、

「ドラ美は助かる。生きて自分の足で歩いて大人になれるんだ」

優しくて、でも力強い言葉に本当なんだってやっと信じられて、そうしたらボロボロ涙がたくさん出てきて、私はレオリオ先生にすがりついてわんわん泣いてしまった。