日々を胸に残して、また
ルックテッドホテル14階287号室、11月29日全員集合! そう連絡が届いたのはひと月前のこと。発信者はいつも通り彼女−−ドラ美だ。他の3人にも届いているだろう。便りがあれば決まり事のように集まるようになっていた。口にはしないが、おそらくみんな思うところは1つだ。
「あーっ! クラピカ、やっと来た!」
「おっせーよ! どこほっつき歩いてたんだよ!」
「……、なんだ、この状況は」
扉を開けた私の目に飛び込んできたのは、白い壁に散りばめられた宝石色の電飾、天井にまで届きそうな豊かな枝葉のツリー。それから、トナカイの耳をつけたゴンにサンタ帽のキルア。情報量の多さに目眩がした。声を掛けられなければ、部屋を間違えたと引き返しただろう。
「クラピカー! よかった、来てくれた!」
「おっ、これでやっと全員揃ったな」
2人に続き、懐かしく心をつつく声が聞こえて振り向けば、ドラ美とレオリオが両手にクリスマスを抱えていた。様々な食材を詰め込んだオードブルにチキン、甘い香りはケーキだろう。
私だけがこの状況から取り残されている気がするのだが……。
「あっキルア! 嫌がってたのに、帽子かぶってくれたんだね!」
「いや、ちげーから。ゴンに無理やり、」
「2人が出かけた後、キルア自分でかぶったんだよ」
「ゴンッ! てめッ!」
変わらない喧嘩風景を背景にドラ美が私を呼ぶ。心底嬉しい、と顔をふやかせている彼女を見ると、しんと降りていた暗闇が温度を取り戻していくような心地になる。
レオリオにまで背中を押されれば、足を踏み入れるしかない。特別な日常だった場所に。
「……何かあったのかと思っていたのだが、」
「えっ、何もないよ? 特別なことがなきゃ、みんなを集めちゃいけない訳じゃないでしょ?」
「そりゃそーだ、ダチが揃うのに理由はいらねえ」
それはそうだが、早めのクリスマスパーティーだと言ってくれればよかったものを。ぼやけば、ドラ美は豆鉄砲でも食らったような顔をした。解せない、何がどうなったらそんな表情になる?
「クラピカにクリスマスパーティーしよ!?なんて言って、来てくれると思えなかったんだなあ」
「……お前には私がどれだけ冷徹な人間に見えているんだ」
「お前、オレの連絡あれだけ無視しておいて自分がハートウォーミングだとでも言うんか、オイ!」
喚くレオリオは放っておき、息を吐く。大事があったのかと、肝が冷えたがいつも通りだったらしい。普段は何かと理由をつけるのに今回に限っては理由の1つもなかったのだ。なにかあったのでは、と勘繰っても無理はないだろう。
「何にもないけど……みんなを思い出して、顔が見たくなっただけ」
そう、こっそりとドラ美は笑った。連絡が取れずともいい、元気でいるのなら。会えなくてもいい、目標を追えているのなら。ただ、過ごしていく日々の中、少しだけ、砂つぶほどでもいいから思い浮かべ、思い出してくれたなら。
そんな風に私たちを日常の一片に浮かべたドラ美は、いてもたってもいられず連絡をくれたらしい。そんなことを言われてしまっては、帰るだなんてとても言えそうにない。とろとろと柔らかい火にかけられたように、表情を取り繕えなくて少し困惑した。
「あ、これクラピカとレオリオの分の被り物ね!」
「……帰らせてもらおう」
「いいじゃん、クラピカも被ろうよ。サンタとトナカイどっちにする?」
「レオリオがサンタじゃね? オッサンだし」
「オイッ!」
夜明けがくれば、また別の日常を過ごしていくのだろう。それでも、この騒がしい日を胸の片隅に置き、次の再会へと笑い合えたらと、そう思うよ。