ダイヤモンドは砕けない


宝石の王様はダイヤモンド。じゃあそのダイヤモンドよりも稀産で、『希少石の皇帝』と呼ばれる宝石ってなーんだ?

「クラピカって宝石に喩えるならレッドベリルだよね」

私には人を宝石に喩える癖があった。世の中にはクズ石の方が大半だからそうそう披露する機会はなかったけれど、これもまあ宝石ハンターの職業病ってやつなのかな。

レッドベリルは緋色のエメラルドとも言われるように、ルビーの深紅に比べて透き通るような明るさがあって、でもどこか鮮烈な、力強い光を放つ宝石だ。硬度は高いがカットが難しくて壊れやすい。成長過程で色んなものを取り込みやすく、それが歪みや傷や曇となる。なのにその余計なはずのものが、レッドベリルの胸を打つような美しさをより引き立てる。
だからね、私は褒め言葉のつもりで言ったんだよ。

「ならば君はダイヤモンドだな、自分の硬度を自覚した方がいい。発言には気をつけることだ」

苦々しげに返された言葉に、私ははっと息を呑んだ。無神経だったと思う。でも色のことを抜きにしたって、クラピカはレッドベリルのような、繊細さと力強さを併せ持った人だ。そういう彼の精神に憧れていた。ただ物としての美しさを見るのではなく、一人の人として恋していた。

「ごめん……」
「何故謝る?」

結局、睨まれて更に何も言えなくなった。それが私の苦い思い出。いくらダイヤモンドのハートを持ってたって砕けそう。



「アンタも面倒な性格してるわねぇ、こんな所まで来て命賭けるくらいなら、いっそ好きだって言っちゃえばいいんだわさ」
「それはできない」

ビスケが王子の護衛としてBW号に乗船すると聞いた時、私も連れて行ってと頼んだ。宝石ハンターでいいなら私だっていいはずだ。クラピカは私に声を掛けてくれなかったし、あの一件以来嫌われてるのかもしれないけれど、ダイヤモンドの意思は硬く、砕けない。動機なんて好きだから役に立ちたいってだけで十分でしょ?

だけど私の気持ちを知らない彼は、乗船前の顔合わせで、こちらを見てぎょっとしたような顔になった。

「何故ドラ美がここにいる」
「クラピカが人手募集してるって聞いたから」
「だがこれは個人的なものだ。協会への依頼ではない」
「知ってる。やっぱり、私は信用できないからだめ?」
「……そうではない」

クラピカは前の時以上に苦々しげな顔をした。ああ、出しゃばったからまた嫌われちゃったみたいだ。別にいいけど。

「危険な旅だ。命の保証はできない」
「知ってる」
「以前の件を気にしているなら謝る。君に悪意が無いことは分かっていたが、私も大人になりきれなかった」
「別にお詫びのつもりで命を賭けるんじゃないよ」
「だったら何故?」

それは言えない。そういう狡い伝え方はしたくない。
私はにっと笑って、どんな説得にも応じないぞと笑顔で伝えた。

「船にはね、私の欲しいとびきり素敵な宝石があるんだ。それが目当てなの」
「そうか。君は……相変わらずダイヤモンドなんだな」
「うん!ある意味、信頼できるでしょ?」
「……一つだけ言わせてくれ。たとえ嫌味でも、私は嫌いな相手を宝石に喩えたりしない」
「ありがとう!じゃあ強化系ダイヤモンドとして、荒事があったら私に任せて!」
「……いや、まぁ、わかった。それで頼む」

だからね、ビスケ。そういうことでいいんだよ。もどかしそうにこっちをちらちら見なくていいの。欲しい宝石がここにあるのは、嘘じゃないんだからさ。

ねぇ?私の大好きなレッドベリル。