アダルトチルドレン
触れられた箇所が火傷をしたように熱かった。
私はクラピカとそういう事をしようとしているのか。霞んでいく思考の端で何とか状況を悟った。
「怖いか」クラピカの妙に落ち着いた声が耳を擽る。熱い吐息に身体が震える。
「ドラ美」私の名を呼ぶクラピカが愛しいと思った。返事の代わりに頭を掻き抱けば、それはもう行為のはじまりで。私はこの男に侵入を許した。
クラピカの唇が首筋を滑り、鎖骨の凹凸に舌を這わせた。漏れそうになる声を、唇をかみしめて堪える。
声を出してはいけない、絶対にバレてはいけない。
隣の部屋にはクラピカの婚約者が眠っているのだから。
どうしてこんな事になったのか。今思えば、私がクラピカに再び出会ってしまった時点で全て始まっていたんだろうな。
クラピカの支えになりたい気持ちは今も昔も変わらないのに、私たちは大人になることを急いでしまったのかもしれない。
執務室の蛍光灯が眩しかった。電気を消そうと言うには今更すぎる問題だし、何より離してくれる気がしない。
「電気消すね」
そう言って私は天井に向かってパチンと指を鳴らした。
プツンと明かりが消え夜が顔を出す。窓から差し込む青白い月明かりがクラピカの姿を艶めかしく照らしていた。
「明るい方が見やすい」
クラピカは顔をあげて言った。
「別に、じっくり見るほどのものじゃないし」
「オレは見たい」
「やめてよ。アンタの婚約者に比べれば私なん、」
クラピカが口を手で塞いだ。
「お前だけだ」
嘘つき。私は呟く。
「お前だけだから……頼む」
胸に落ちてきた頭。肌に触れる髪がちょっとだけこそばゆい。
サラサラの髪をあやすように撫でながら、私たちの行く末を考えた。
私はどうなってもいい。この身に制裁が下されようとも、クラピカが生きてくれるなら。
そしていつか私の事なんて忘れて、婚約者と家庭を築けばいい。あの子は良い子だ。クラピカとの未来を真剣に望んでいる。
でも、許されるなら隣にいつのは私でありたいと、浅ましくも願うってしまう。
私は深く息を吐いた。
溜め息は静かな執務室に大きく響いてしまう。
「止めないからな」とクラピカが言った。
まるで私に執着している、大きな子供のようだと思った。
「止めてほしいなんて言ってない」
それを享受する自分も大概だけれども。