主の側に

「……自分は村正作の槍、蜻蛉切と申します」


今日から新たに加わった蜻蛉切。本田忠勝の槍とあって体格がいい。背丈について話すと "そうですなぁ……自分は他の槍よりも、幾分か背が高いかもしれませんな" と素朴な喋り方で返してくる。勇ましい外見に反して、彼の性格はいたって穏やかそうだ。


彼をどの部隊にいれようか、本丸に来たばかりではあるが隊長を任せてもしっかりと率いてくれそうだ。そう考えを巡らせていると、頻りに辺りを見回していた蜻蛉切がボソボソと言いにくそうに話しかけてくる。


「主、あの……」


どうした?と問えば彼はおずおずと尋ねてくる。


「……村正は、来ていないのでしょうか?」


村正、といえば千子村正のことだろうか。蜻蛉切は彼に会いたいのかもしれない。うちの本丸にはまだ村正は来ていない、そう告げると彼は "そうでしたか" と残念そうに寂しげな表情を浮かべる。


これは一刻も早く村正を本丸に迎えいれなければいけない。次に村正が現れるのはいつだ。急いで情報を収集せねば。意気揚々と立ち上がった此方の様子を見て慌てて蜻蛉切が止めに入る。


「いえ、わざわざ主の手を煩わせるようなことではありません」


物である自分が余計なことを言って申し訳ありませぬ、と謝る蜻蛉切。物とはいえ、もっと自分の感情を持って良いのだと伝えてみるも、この謙虚過ぎる性格からすると今のが彼の精一杯の自己主張なのかもしれない。


「村正にはそのうちきっと会えます故」


「それに自分は、主のお側にいれることが一番の幸せなのですから」




主の側に




18/03/15

- 1 -