褒め殺しは求めてないです…


※こちらではせつなに固定させて頂きます。
社外人パロディ。


ーー例えば朝起きた時、真っ先に目に入るのが誰よりも大事な人で、その人が起きた私に対して笑顔で、


「おはよう。二度寝しないで起きれたな、偉いぞ」


なんて褒められたらどんなに幸せな 1日になるだろうか!考えただけでも頬が緩みまくるし、頑張ろうという気力が湧いてくる。おっと、考えただけでも涎が…
それだけじゃなくて例えば、毎日必要だからやっている着替えなんかも、


「お、ちゃんと着替えられたんだな。偉い偉い」
「皺もないし、アイロン上手だな。偉いぞ」


…モチベーション上がるしかないよね??寧ろ上がらない人が居るんだろうか。私には考えられない!!!ただただ必要だからやってることを偉い偉いと褒めてくれる。そんな日々を過ごせるのなら、どんな苦難だって乗り越えられる気がする。


「へえ、で?それを俺に言ってせつなはどうしたい訳?」
「や、凌統が話に割り込んで来ただけで、私は友達に話してただけなんだけど?」
「素直じゃないねえ、アンタは。俺がそれ、やってあげようか?」
「え」
「せつなの実力は上も良いって褒めてたし、アンタは褒められたらモチベーション上がるんだろ?だとしたら教育担当で近所のお兄さんだった俺がその役目を買って出るのが道理だろ」
「いやいや、貴方のファンに刺されるのはごめんだから大丈夫だよ」


…それに、これ以上好きにならせないで欲しい。
そんなことを内心付け足しながら、残念だなあと呟いてから珈琲を飲む凌統の姿を眺める。はあああ、相変わらずイケメンだ。家が隣同士だった凌統と私は20年以上の付き合いだ。勉強が苦手な私に暇だから、なんて理由で付きっきりで教えてくれた時のことは今でも鮮明に思い出せる。あの頃だって、凄く褒めてくれていたのにまた褒めてくれる、なんて……ますます好きになってしまう。こうやって話してるだけでも心臓が五月蝿いのに。…本当、勘弁して欲しい。


「就職したい?だったら俺が居る会社に来るかい?せつなの実力なら余裕だって」


何でも教えてやるよ、なんて昔から大好きな人に言われて全力で頑張らない人間が居るのだろうか。…きっと居ないよね、うん。必死に面接練習や小テストを解いたりして何とか受かった私を待っていたのは、「アンタの教育担当、俺だから宜しくな」なんて笑う凌統に膝から崩れ落ちそうになるのを堪えたあの時の私に賛辞を送りたい。惚れてる人に仕事教えて貰うなんて幸せ過ぎるんですが??そんなことを考えつつも割り込まれてびっくりしているであろう友達に申し訳ないと思いつつ視線を向ければ、彼女はまるで微笑ましいものを見るかのようににこにこと笑いながら私達を眺めていた。…うん??今の、笑う要素あった?友達は私の視線に気付き、笑みを深める。あ、嫌な予感。制止しなければ、と口を開こうとしたけれど、彼女の方が早かったようだ。


「凌統先輩ならせつなちゃんを何て褒めるんですか?」
「は、?」
「俺か?…そうだなあ、俺なら……せつな、お前は毎日花瓶の水を入れ替えてて偉いな、とかか?」
「な、何で知って…!?」
「はあ?俺がアンタの行動に気付かない訳ないだろ。どれくらいの付き合いだと思ってんの。せつながこーんなに小さい時から知ってるんだぜ?…別嬪になったよなあ」
「な、何を言って…!!」
「本当のことを言ってるだけだろ?せつなは可愛いし良い子だよ。自慢の部下だからな」
「か、勘弁して下さい…」


にっこりと微笑みながらポンポンと私の頭を撫でてくる凌統にきゅううと胸を締め付けられる。“自慢の部下”その言葉も充分嬉しいんだけど、それ以上になれたら良いなぁなんて欲張りなことを思ってしまったりもする。流石に欲張り過ぎる、よね…そんなことを思いながらそっと目線だけ上にすれば、凌統とかちりと目が合う。「ん?」と首を傾げる凌統の顔の良さを改めて実感しながらテーブルに突っ伏す。はああああ…好き過ぎてつらい…顔が良過ぎる…


「せつな、どうしたんだ?疲れたのか?」
「せつなちゃんお疲れなんですよ、たーくさん褒めて癒してあげて下さい。先輩の言葉がせつなちゃんにとって素敵なご褒美ですから」
「何だ、そんなので良いのかい?せつなは相変わらず甘えたさんだなあ。…せつなは毎日休まず仕事に来てて偉いな。毎日自炊してて偉いな、たまには食わせてくれても良いんだぜ?髪型も毎日変わってて凄いな、たまには俺とお揃いのポニーテールなんてどうだい?せつななら似合うと思うんだけどなあ……って、顔が赤いけど大丈夫か?」
「…いっそ殺して…」
「は、死なせる訳ないだろ。せつなが居ないなんて想像出来ないしな。…逃げても捕まえるからな?」
「かんべんしてください」


手をするりと撫でられ、悪戯っぽい笑みを浮かべながら紡がれた言葉に、心臓を鷲掴みされたような感覚に陥りながら何とか言葉を紡げば、声が震えていたのを思いっきり笑われた。だ、誰のせいだと…!!唐突に始まった誰よりも好きな人からの褒め殺しに私の思考はショート寸前…ひえええと内心パニックになりつつもこの褒め殺しのきっかけを作った友達の方を見れば、彼女はひたすらに笑みを浮かべているし、それに抗議しようとすればよそ見は許さないと言わんばかりに視界に凌統の顔が入って来るし……あの、本当に勘弁して下さい…そんなことを思っていた私は、まさかこの褒め殺しが定期的に行われることになることに気付いてすらいなかった…


気付かないのは彼女だけ



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