永遠にあなたしか見えない
※死ネタ→現代に転生
ーー私の恋仲の人は、とても優しい人だと思う。本人は否定するし、周りの人だって首を傾げたりするけれど、あの人はとても優しくて素敵な人だ。そんなことを言えば、あの方は照れたように顔を真っ赤にしながら力一杯否定する。そんなところも可愛いし好きだと言えば、政則様は照れ臭そうに笑いながら「…俺も、好きだけどよォ…恥ずかしいこと言わせんな!」と言ってくれるあの時間が幸せだった。いつまでも、続いて欲しいと願っていた…けれどーー…
「……は……」
息が、苦しい。ヒューヒューと喉が鳴っている。ーーああ、私はもうダメなのだと。まるで他人事のように理解する。…政則様は無事だろうか。あの人が無事なら、それで良い。でも、もしあの人に危機が迫っているのなら、こんなところで立ち止まっている訳にはいかないのだけれど、ごめんなさい…身体が、言うことを聞かないのです。最期が政則様に危害を加えようとした輩と一緒なのは非常に気が進まないのですが、攻撃を躱せなかった私が悪いのだから仕方ない、ですね……ああ、瞼が重い……?馬の、足音…?
「なまえーー!!」
「…まさ、のりさま…?」
「なまえ!!…くそ、嫌な予感がしたと思ったら…!!止血すれば良いか!?俺が来たからもう大丈夫だかんな!」
「…どう、して…此処が…」
「俺が嫁のこと分からねえ訳ないだろうが!!…無理して話すんじゃねぇ。…くそ、血が止まらねェ…」
「…政則様…」
「政則!!なまえ殿は見付かっーー……なまえ殿…」
「清正!手を貸してくれ、血が止まらねぇんだ!」
「…政則、彼女は、もう…」
「うるせえ!!…くそ、どうして止まらねぇんだ…止まれ、止まれってくれ…!」
「…政則様、もう…良いのです…」
「良くねぇだろ!!この戦が終わったら籍を入れんだろ!…なのに、何でだよ…っ!」
ああ、愛しい旦那様が泣いている。大丈夫ですよ、と声を掛けたいのに口を開けば出て来るのはヒューヒューと喉が鳴る音だけ。それでも無理して言葉を紡ごうとすれば、ごぽりと吐血してしまった。それを見た瞬間、政則様は顔を真っ青にしながら焦ったように清正様に医者を呼んでくれ!と叫んでいる。…ああ、もう無理なのだと分かっている筈なのに。…後から来たのだろう、秀吉様やねね様、三成様は顔を真っ青にしながらも清正様と一緒に叫んでいる政則様を宥めている。…私が、彼を突き放してあげないと、政則様は前には進めない。だからお願い、もう少しだけ…時間を、下さい。
「…まさ、のり、さま…」
「喋るんじゃねえ!!…くそ、どうしてなまえがこんなことにならなきゃいけねぇんだよ!!…どうして、そんな諦めたような目をしてんだよ…っ!傍に居ろって、言ったじゃねぇかよ…!」
「…まさ、のり、さま…わた、し、あなたに…であえて、しあわせ、でした」
「…やめろ、やめてくれ…そんな、遺言みてぇじゃねぇか…嫌だ、聞きたくねえ…」
「政則、良い加減にしなさい!!なまえちゃんに負担を掛けさせるんじゃないよ!」
「…おねね様の言う通りだ。なまえはもうダメだとお前も分かってるだろう、良い加減楽にしてやったらどうだ。政則がそんなんだと、なまえが安心して逝けないだろう」
「うるせえ!!なまえは死なせねえ!!」
「…政則、現実から目を逸らすな!」
「…まさのりさま、わたしは、ずっと…まさのりさまのおそばに、いたかった…でも、もうむり、なんです…あなたのなみだを、ぬぐえるちからが、ないのです…」
「…嫌だ…頼むからそんなことを言うんじゃ…「政則、良い加減にせえ。惚れた女の言葉ぐらいちゃんと聞いてやるんじゃ」…ひでよし、さま…」
「…苦しいじゃろうに、お前の為に最期の力を振り絞ってお前の為に言葉を紡いどる。そんななまえ殿の想いを他でもないお前が否定するんじゃない!」
「…ぅ…」
「…あり、がとう、ございます…ひでよし、さま…」
「…ええんじゃええんじゃ、なまえ殿の気持ちはよー分かっとるからな。…政則と二人きりの方がええか?」
「い、いいえ…まさのり、さま…わたしが、いなく…っ…なったら、あとを、おって、しま……い、そ、なの…で…いて、ください…」
「…ん。ゆっくりでええからな」
「…おいそ、がしい…のに…すみ、ません…」
私の言葉に、秀吉様はゆるく首を横に振った後、優しく笑いながら頭を撫でてくれた。ねね様が私の左手を握り、三成様が私の右手を握る。清正様は政則様を見ていることを選んだらしく、少しばかりホッとした。ああ、あんなに力一杯拳を握って…舌を噛み切ってしまわないか不安になってしまう。まあ、ちゃんと清正様が気付いてくれたから大丈夫、かな…次第に視界が狭くなってるのが分かる。ああ、早く言わなければ…
「…まさのり、さま、わたしを、おい…かけちゃ、だめ、ですよ…ひで、よしさまの、てんか、ちかく、で、みる、ので、しょう…?」
「…っ…ああ…!」
「、でし、たら、ここで、たちど…けほ…まったら、だめ…っ、です…ちゃんと、まって…ます、から、てんじゅを、まっとう、して、くだ、さい、ね…」
「…他の男に、目移りするんじゃ、ねぇぞ。お前は、可愛いんだから隙を見せんなよ、な!」
「…ふふふ、はい、…まさ、のり、さま、しか…みて、ない、です、よ」
「っ…そうかよ…!」
「…なまえちゃん、目が…」
「…ねね、さま、もう、げんか…い、みたい、です…めが、あかない、んです…うふ、ふ…さい、ごが…だい、すきな、ひと…たちに、みとられ、るの、しあわ、せ、です、ね」
「…なまえ…!!」
「…みなさ、ま、はやく、きちゃ、だめ、です、よ、?ゆ、っくり…きて、くだ、さいね…?」
「…ああ、ああ…!!…俺が逝くまで、ちゃんと待ってろ、よな!」
はい、という言葉はちゃんと届いただろうか。政則様の言葉に応えようとした瞬間、私の意識は完全に落ちた。…私を呼ぶ政則様の、秀吉様の、ねね様の、三成様の、清正様の声を辛うじて覚えている限り、私は答えは聞こえなかったのかも知れない。…でも、聞こえてたら良いなと思ってしまうのは私のエゴなんだろうね。
ーーあれから、何故か私は再び生を受けてしまった。戦が遥か昔に終わった平成という時代を私はOLとして日々過ごしている。…会えていないけれど、政則様達も同じ時代に生きて居たら良いなと思ってしまう。…無理かなあ…
「なまえちゃん、どうかした?」
「え、あ、いやー…今日の晩ご飯はどうしようかな、と」
「ああ、そんなこと?だったら俺が奢ってあげるから一緒に飯食いに行こうよ、親睦を深める為にも、さ」
「え、いや、あの…」
「顔真っ赤にしちゃって可愛いなあ、大丈夫だって。ただご飯食べるだけだからさ」
「こ、困ります…!」
「なまえちゃんはイタリアンとかはどう?フレンチとかの方が好き?」
ひ、人の話を聞かない人だな…!!社長の息子という立場を悪用して色々好き勝手に振る舞う先輩に、私達女性社員はことごとく困っていた。男性社員達はクビにされるのを避けて関わって来ないし、女性社員達は標的にされたくないから関わって来ない。あれ、これは詰んだので…「ーーおい、困るって言ってんだろうが。聞こえねぇのかあ?」…この、力強くて優しい声を、私は知っている。振り向こうとした瞬間、グイッと力一杯手を引かれ、私は誰かの腕の中に閉じ込められた。…ああ、ああ、やっと、やっと逢えたーー…!
「コイツ俺のだから手ぇ出すんじゃねぇよ!」
「な、何なんだお前は!ぼくを誰だと思っ…「ただの邪魔者だろう?」は!?」
「生きてる価値がない、ゴミ以下の存在だ」
「女なら誰でも良いって?…虫唾が走るな。ちょーっと奥で話をしようじゃないか」
「…政則、此処は俺と清正に任せておけ」
「おー、後で俺にも殴らせろよな!な!……さてと、邪魔者は消えたことだし……久し振りだな、なまえ。やーっと見付けたぜ」
「…っ、まさ、のり、さま…!」
「まーた泣いてんのか。なまえは相変わらず泣き虫だなあ」
困ったように笑いながら私を撫でるその優しい手に、私の涙は止まることを知らないかのように流れていく。身体中の水分が出てしまうんじゃないかって不安になるくらい流していれば、ぺろっと政則様に涙を舐められ……ええ??びっくりして思わず止まる涙に、政則様は悪戯っぽく笑いながら「やっと止まったな」なんて笑っている。うう、好き…口を開こうとした瞬間、くるりと体の向きを変えられて私は政則様の胸板に顔を押し付ける。あ、相変わらず良い筋肉ですね…??
「…やっと逢えたのに、また死のうとするんじゃねぇよ」
「…ぁ、う、ご、ごめんなさい…逢い、たかったです…」
「ん、俺も。…なあ、なまえ。今世でも俺を愛してくれるよな?な?俺はもう、なまえしか見えねえんだけどよ…」
「…私だって、政則様だけをずっと待ってたんですから…!!幸せに、して下さいね?」
「!任せとけって!!勘弁してくれってくらい愛してやるからな!な!あ、明日から秀吉様とねね様の会社に転職だから準備しとけよー。これ新しい家の鍵な。俺と一緒だかんな!」
「…ちょっと待って??」
色々キャパオーバーなんですけど??そんな私を無視して政則様は非常に楽しそうに笑っていて……んんん、好き…!先輩とお話(物理)をしたその足で社長に私の辞表を叩き付けたらしい三成様と清正様とも再会を無事に済ませ、その足で政則様達の会社に行けば、ねね様と秀吉様に抱き締められた。…色々展開が早くて理解が追い付かないけれど、幸せな毎日が待ってるのだけは理解出来た。…また、会えるなんて夢みたい。今世では長生きしてずっとずっと皆と過ごせますように!
END.
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