親子喧嘩は他所でやってください


ーーいくら上司と先輩だとしても、許せないことってあるよね? 私は親が士官しているからという理由で、毛利家に仕えている文官だ。戦闘面では全く役には立たないけれど、作戦を考える方では自信がある。調子に乗りすぎ?そんなことはない、私の上司も先輩も褒めてくれるもん。…まあ、その褒め方が異常だとは思うんだけど…


「ーーやっぱりなまえは凄いねえ、そんな作戦考えも付かなかったよ!本に認め……いや、これはなまえが私の為に考えてくれた作戦だから世に出さないようにしようね」
「ふふ、なまえのその才にはいつも驚かされます。これだから貴女から目が離せないし手が離せない…これからも私の隣で私を支えて下さいね」


いや、重いんだが??
びっくりすることにこの二人親子なんだよね、有り得なくない?好みって似るのかなあ、遺伝ってやつ?はた迷惑なんだが?亡くなった奥方に似てるから〜とか言われて同情したらこれだよ。だってほら、毛利様と隆景様だよ?あんなに顔が良い二人からきゅ、と手を握られながら寂しそうに見つめられたらさあ…許すしかないじゃん?上司だし追っかけも多いから泣かせたら絶対に刺される…私、何も悪くない気がするんだけど…?なんて考えながら明後日の方向を見つめる。今、私の膝には毛利様が背中には隆景様がいらっしゃったりする。いや、邪魔なんだが??


「…毛利様、隆景様、疲れたんでしたら部屋に戻っては如何ですか?甘味でもお持ちしましょうか」
「…私はなまえの膝枕で眠りたいなあ。ダメかい?」
「ダメに決まってるでしょう、父上。なまえは私が独り占めしますので離れて下さい」
「…隆景、君はどうして此処に居るのかな?本の整理をお願いしたはずなんだけど」
「そんなのすぐに片付けて来たに決まってるじゃないですか。…父上の考えることなんてお見通しなんですから、ね」
「おやおや、それは手厳しいねえ」
「…親子喧嘩なら他所でやってくれませんか?」


空気も重いんだが??何で私を挟んでやるのか…城を破壊しないならどれだけやってくれても良いんだから向こうに行って好きなだけやっててくれないかなあ…私には仕事がまだあるんだけどなあ…私は一点集中型だから複数のことを同時進行することは壊滅的に下手くそだ。二人はそれを知っているはずなのに、私が仕事してる時に限って邪魔しに来る。嫌がらせだよね??度が過ぎるようなら熱湯にぶち込むぞ…?


「そんな冷たい態度を取るなまえも可愛いねえ、私はなまえと一緒に居る時が一番疲れが取れるんだ。だめかな?」
「そんな顔されてもダメです。お布団敷きますから寝室で休まれて下さい」
「おや、なまえが整えてくれるのかい?これは…嬉しいねえ、安眠出来そうだ」
「そのまま永眠すれば宜しいのでは?…なまえ、私も疲れてます。貴女を独り占めしたいからと父上に本の整理を押し付けられて急いで終わらせて来たんです。私にも何か下さい」
「めんど…んん、隆景様のお布団も敷きますね。今日はお日様に干してたんでぽかぽかですよ」
「そうだったんですか?なかなかの重労働だったんじゃないですか?呼んで下されば良かったのに…」
「戦で疲れてるお二方を労わる為ですから。申し訳ないと思うんでしたらさっさと休んでその目の下にあるでっかい隈を消しといて下さい」


これだからこの親子は困るんだよな〜〜!!この人達の大丈夫は宛てになんかならないんだから。窶れ切った顔で隈があるのに大丈夫です、って休もうとすらしない。しかもそんな状態の自分達を自覚してないときた。無自覚ほどタチが悪いことはないよね…まずはお二方を布団に突っ込まなきゃ…取り込んではあるから敷けば良いだけかな…そんなことを思いながら立とうとすれば、ぎゅっと圧力が掛かる。何故に??


「…私は布団じゃないんですけど?」
「…君には本当に驚かされるよ…!気付かれてないと思ってたんだけどなあ…」
「…なまえ、貴女は本当に良く見てますね。感服致します」
「えっ、それ本当に言ってます?気付かれてないのお二方ぐらいですからね、他の人達もあんなに休ませようとしてたのに…」
「おや」
「いつでしょう…?」
「本当にタチ悪いですね??は〜もー、とにかく今は休んで体調を回復させて下さい。話はそれからです」
「…私、なまえの手料理が食べたいなあ」
「父上狡いです。なまえ、私も貴女の手料理が食べたいです。ちゃんと休みます」
「…仕事溜まってるの見えないんですか??あーもう、ちゃんと休んで下さいよ!」


仕事を増やしたくないけれど、今は要であるこの親子を休ませることが優先だから仕方ない。…あまりご飯を召し上がってないみたいだし、胃に優しい物を作るか…とりあえずご飯を食べさせてから寝かせようと思って急いでお粥を作って食べさせたんだけど、ちょっと食べただけでお休み3秒だったわ。何で限界だって気付かなかった??こうなるだろうと思って少なめに作ってたけど、私有能だからね。…まあ、回数がえげつないからではあるんだけど。


「ーーお疲れ様でした、良い夢を」


一応忠誠は誓ってるんで、あまり無理はしないで下さいね。そんなことを先輩に愚痴ったら「おまえ、そういうとこだぞ…!」って言われたんだけど何が?って感じ。綺麗な顔立ちの親子だぞ?そりゃあ忠誠誓うなら美形が良いじゃん??まあ、取り合いだけはやめてくれたら助かるんだけど…え、無理??…やっぱりそうだよねえ…

ーーまあ、嫌いではないけどさ。



END.


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