男運ないとか言われた


男運ないとか、見る目ないとか、付き合う度に言われる私はじゃあみんなのアイドルなら文句ないよな、と謎の啖呵切ってしまった。アホか。
最初の彼は甲斐性なしだった。なんかもう笑うしかなかった。二人目の彼はナルシシストだった。なんかもう残念過ぎた。三人目の彼は浮気症だった。前の彼の方がましだったと思った。高2の夏から私はもう恋愛とかどうでもいいかと思い始めた。その矢先、クラスのとある女子に昔のことを掘り返されイラっときてあんなことを言ってしまった。私のバカ。

私の作戦は完璧だった。将を射んと欲すればまず馬を射よ。みんなが憧れる幸村クンを得るために私はその周り、テニス部レギュラーと関わりを深めた。元より丸井とは同じクラスで仲が良かったし真田と柳生は風紀委員で頻繁に顔を合わせていたし、風紀委員の仕事で朝に仁王や切原くんを注意する。繋がり自体は十分にあった。関わりを増やせば良いだけだった。幸村クンは入院していたからどうせ関わることもできなかったし、期間は十分にあった。2年のうちに柳くんとジャッカル以外とは十分親しくなった。3年に上がってジャッカルと同じクラスになって、多分誰よりも仲良くなった。そのうち真田と柳生と話してるところに柳くんが来て、知り合った。みんなと仲良くなるにつれて、私は目的が不純過ぎて自分に吐き気がした。



幸村クンが復帰して、彼から私に会いに来たのは誤算だった。

「みんなが瀬川さんのことを口々に言うから、俺も話してみたくて」

みんなに愛される彼の笑顔で気分が悪くなった。私はただ愛想笑いを浮かべるのが精一杯だった。

私が啖呵切ったクラスの女子にやっぱり私はみんなのアイドルとは仲良くなれないと降参した。その女子は十分過ぎるくらいアイドル達と親しくなったじゃんと言った。私は再び愛想笑いを浮かべてその子との会話を終わらせた。



1度できた繋がりは消えず、テニス部との関わりはまた増えていく。たまにすれ違う幸村クンは意味有りげな視線を私に向けてくる。そんな私はただふらふらと毎日を過ごすだけ。

そんなふらふら生きる私を抱き留めたのは柳くんだった。
私がテニス部と仲良くなろうとした理由も知っていてなお、彼は私が好きだと囁いた。もし彼がダメな人でもそれはそれでいいやとしがみついた。もしかしたら、私の見る目が悪いとか、男運ないとかじゃなくて、私自身問題だらけなのかもしれない。

どうしたら、人を好きになれたっけ。


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