キャンディひと粒


柳生にペンダントを貰ってご機嫌なまま教室に入れば既に教室にいた友人達は口々におめでとう、と声をかけてくれた。話したことのなかった子もノリで言ってくれて私のテンションは下がることを知らない。例え今日、大嫌いな数学で当てられてもすぐに答えられそうな気さえする。今日数学ないけれど。
そんなハイテンションな中、移動教室で音楽室へ向かおうと教室を出れば丁度隣のクラスからもよく知った人物が出てきて思わず声をかけた。

「おはよう、ジャッカル」
「瀬川か、はよ」

ジャッカルの周りは相変わず人が多いなと思い、その理由となりそうなことを1つ1つ心の中で挙げていく。私の中でそれをまとめるといい人だからの一言で終わってしまったが、それで済ませたら申し訳なくなるくらい彼はいい人なのでとりあえず考えること自体放棄することにした。



ジャッカル桑原の場合



「何か今日機嫌いいな?」
「えっ?まぁ、いいけど、分かる物なの?」
「そりゃー毎日部活で見てっからな、」

そういうものなのだろうか。毎日部活で見てても私には絶対に仁王と蓮二の変化は分からないと思う。まぁ、片方は詐欺師だし仕方ないよね。

「何かいい事でもあったのか?」
「うん。柳生から誕プレ貰ったの」

自慢したくてたまらない私は思わず言ってしまったが、この流れは私がジャッカルに物を強請っているみたいじゃないか。丸井かよ。これはよろしくない。

「えっ誕生日っていつだ?」
「……今日」
「わりぃ、何も用意してねぇ。」
「気にしないで、ジャッカルにはいつもお世話になってるから」
「でもよ…」

言葉でどう言ってもきっとジャッカルは納得しないよね…
ジャッカルの手元にあって私が貰っても良さそうなものって……あ、

「じゃあさ、飴1つちょうだい?丸井にたまにあげてるやつ。」
「え?…これでいいのか?」
「うん、ありがとうジャッカル。授業始まるから行くね」
「おう、遅れんなよ!誕生日おめでとう!!」

「ありがとー!!」

後ろ手にジャッカルに手を振りながら音楽室へと足を急がせた。

貰ったキャンディひと粒は授業が始まりそうだったから一先ずポケットにつっこんだ。


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