レギュラー云々


宍戸が滝に勝った。滝がレギュラーから落ちて、日吉がレギュラーになった。ここまでは私も理解できた。実力主義のうちで、レギュラーが負ければ準レギュラーの一番強い人が入る。例え勝ったのが宍戸でも、一度でも負けた宍戸はレギュラーになれない。しかしこの先は全くもって理解できなかった。何だ、宍戸が自慢の髪を切って頼み込んだって。鳳がレギュラー落ちしてでも、と言いかけたとか。それに跡部が乗っかったとか。うちの部はアホしかいないのか。

というより

「宍戸が長い髪が自慢だったって前提があるから凄いことしたみたいだけど大して短くなってないよね。一般人と同じになっただけだよね」

何でよりによって俺に話すか、とでも言いたげな滝の視線はスルーして続ける。

「その短くなった髪も帽子被ってるからあんまり分かんないし、さ。うちの部頭おかしいんじゃないかな。切った髪そこに放置とか」
「あぁ、掃除が面倒だったって話ね」

ここまで話して滝は全てをその一言でまとめ切り上げた。なんてこったい。

「跡部が普通じゃないのはもとからだし、向日はアホだし、芥川はあんなだし、忍足は心閉ざすし、宍戸すらおかしくなって、鳳はいつの間にか宍戸信者になってるし、まともな滝がレギュラー落ち。辛い」

ついでに監督もおかしいし。音楽教師が島持ってるとか何、意味分かんない。

「で?本題は?」

あぁ、本当に察しの良い滝が大好きだ。

「あー、でも、それは俺じゃなくて本人に言いなよ」

は?と滝の視線を辿ればそこに立っていたのは日吉。嘘でしょ、滝はなぜ私の考えてる事分かるんだ。

「というわけで、日吉、レギュラー入りおめでとう。俺からのプレゼント」

は?と再び滝に視線を戻そうとすれば、それより前に肩を押された。転ぶだろ、危ないだろ、というかマジ転ぶ。

「っ何してんですか」

日吉に支えられ、その危機はさったけれど、ちょっと待って。

「瀬川先輩、大丈夫ですか?」
「う、うん」

支えられてすぐそこにある日吉の顔が綺麗で見惚れる。なんだこの部は。みんな美人か。距離をとろうと足を引けば今度は背後から滝が顔を近付けてきた。

「顔赤いけど大丈夫?」

ニヤニヤと効果音でも付きそうな滝の笑みに僅かにイラッときた。しかしこいつも顔立ちは嫌味な程美しい。

「…」
「ほら、瀬川、はやく言いなよ」
「………わかってるよ」

二人と少し離れ、ようやく本題だ。

「日吉、レギュラー入りおめでとう」
「………ありがとうございます」

日吉が今更、みたいな顔をしたのは見なかったことにして、ありがとうだけを受け取っておこう。


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