彼女に浮気されたブン太


友達が浮気をして、その上色々やらかしたらしく停学をくらったらしい。らしいというのも、彼女は私にそのことに関して一切口を割らないからだ。周りが噂し、それから推測したまでだ。元カレとなってしまった彼は元カノという十字架を背負って、なんて言われて、それなのにクラスで見かける彼はそれはもういつも通りで、話しかけてもいつも通りで、きっと彼は彼女の浮気を知っていたか、或いは彼も彼女への想いが薄れていたか、空元気か。

「俺、お前のこと好きになるかもしれない」

何にせよ、私は何も知らない振りをして彼女にも、彼にも今まで通りの接し方をしてきた。そうしたら、突然にそんなことを言われて驚いた。

「あぁ、違うな…前から薄々気付いてた。瀬川サンが好きだ。」

言い直すべきはそこじゃないだろう、お願いだから否定して。

「本当は全部知ってんだろ?それでなお、俺にもあいつにもいままで通り。俺の周りはたまにネタとして言うし、あいつの周りは俺をカワイソウだとでも言うように目を向ける。お前だけなんだよ、全く気にしないで俺に接してくれる奴」

全く気にしてないわけじゃない。でも、私にとって浮気とか停学くらうとか、彼女の行動が現実離れしたことで、ありえない事と否定していた。

「瀬川サンが仁王と両想いだって知ってるし、こんな状況で言うのも狡いって分かってるけど、言わせてくれ。俺は瀬川サンが好きだ、付き合ってほしい。」

もう色々と頭が追いつかない。私と仁王が両想い?そして彼……丸井が私を好きで、付き合ってほしい…

「去年の学祭の二日目、仁王の話聞いたろ?」

あぁ、確かに聞いた。前日みんなでお泊り会(仮)をして、自ら恋バナを振って自爆した、と、その場にいた一人から聞いた。

「去年の12月、クラスの女子から見たい映画の話を聞かれただろ?」

聞かれた。特になかったけど、とある少女漫画の実写映画があるのを思い出してとりあえずそれを挙げた。

「今年の4月、お前の親友がお見合いの仲介人やる、みたいなこと言ったろ?」

言っていた。私はいつものアホみたいな寸劇の一つだろうとなんとなく眺めていた。

「全部、あいつがお前と仁王をくっつけるために仕向けたんだ」

待って、それじゃあまるで

「あいつは俺がお前に惹かれてることにずっと前から気付いてたんだ」

あぁ、そうか。だから彼女は私に何も言わなかったんだ。私が全ての原因だったのだ。彼女が停学になったのも、彼女が浮気したのも、元を辿れば全て私のせい。

あぁ、目が回る。私を真っ直ぐに捉える彼の赤髪が夕日に混ざって輝いている。

気がつけば私は彼とキスをしていた。彼は今彼女はいないし浮気でも何でもないのに沸き起こる背徳感に、私は何をしているのだろうと思った。私の気持ちは、どこへ行った?


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