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 オレたちが退院してから数年後、二十歳になる頃に二人は同棲を始めた。家はイザナが一人で暮らしていたところをそのまま使っていた。

 たびたび二人の住む家に行くことがあったが、室内は訪れる度に変わっていき、オレから見ても生活感がなかった場所だったのに、気づけば『二人で暮らしている』と一目で分かるくらい、モノが増えていた。

 それからまた時が経ち、今日、二人は華々しく祝われながら『家族』となった。
 これまでのことを思い出していたオレは、自身の目頭が熱くなり、軽く指で押さえた。すると、オレの隣に座っていた灰谷兄弟が楽しそうに笑いながらこちらを見て、声をかけてきた。

「鶴蝶、もしかして泣いてんの?」
「へぇ。鶴蝶もこういうので泣いたりするんだ」
「オレはずっと、あんな風に幸せそうに笑い合う二人が見たかったんだ」

 そう返すと、二人は一瞬驚いた顔をした後、ふっと微笑んで前にいる二人の方へ視線を戻した。

「鶴蝶さ、ナマエのこと好きだっただろ」

 不意に蘭がそう言った。誰にも言った覚えはなかったが、どうやら蘭にも、そして竜胆にも、オレのアイツに対する気持ちは気づかれていたらしい。

「あぁ、好きだった。イザナのことをずっと思い続けているナマエを見て、好きになった」
「辛くね? 好きな女の結婚式を見るとか」
「いや。好きだったからこそ、オレはイザナとナマエがああやって幸せそうに笑う姿が見たかった。だから、これがオレの望んだ結末なんだ」

 そう言うと、二人は小さく笑った。

「ほんと、お人好しだな」

 蘭の言葉に、オレは笑って「そうかもな」と返した。

 アイツがオレの思いに気づいているかは今も分からない。だけどこの先もずっと知らないままでいいと思っている。別に知られたからといって、オレの二人に対する思いや態度は変わらないから問題はない。

 だが、あえて言う必要もないと思うし、優しいアイツのことだから、知ったら少なからず気にするかもしれない。それなら知らないままでいてくれた方がいいだろう。

 オレは目尻に滲んだ涙を手の甲で拭い、バージンロードを歩いて行く二人に向けて、花びらを放った。