お互い強火ということで
「あら、いい反応ね。もしかして貴方がナマエの彼氏?」
「テメェ、いきなりなんだよ!ナマエ、この女誰だ!」
「ご、ごめんね竜胆……。メルトちゃん、初対面なのに敵対心出し過ぎだよ」
「当たり前じゃない、だって初対面なんだもの」
ことは数分前に戻る。
見回りをしていたナマエを見かけた竜胆が、彼女に声をかけようと近寄った瞬間、彼女へ伸ばした彼の腕を切り落とさんばかりの勢いで、自慢の脚を構えたメルトリリスが上空から降りてきたのだ。
彼女に気づいた彼が咄嗟に後ろに下がって避けたことにより大事には至らなかったものの、ナマエと竜胆の間はメルトリリスによって遮られてしまった。
メルトリリスは目の前にいる彼を上から下まで見てから小さく鼻で笑った後、冒頭のやり取りとなった。
「話はよく聞いているわ。でも、思っていたよりも弱そうね。場所が場所なら瞬殺してゼリーにでもしていたわ」
「んだと?」
「あーもー!メルトちゃん、そんなに挑発しないで!」
「なによ、本当のことを言ったまでよ?」
「メルトちゃんはサーヴァントなんだから力の差が歴然なのは当然でしょ!本当にごめんね、竜胆。彼女、こういう言い方する子で……」
「おいナマエ、説明しろ。今すぐ」
「……はい」
彼女はこの六本木の守護者の1人として選定され、自身の一番相性がいいと判断されたサーヴァント・メルトリリスと契約をし、本日に至るまで守護者としての役割を全うしていた。それら一連の事情を知った竜胆は、理解ができないと言いたげな顔をしつつも“分かった”と言った。
「貴方、見た目と雰囲気から察するに、“まともな”道を歩いてないわね。こんな男に私の可愛いナマエを渡せないわ」
「確かにまともな道を歩いてるとは言えねぇけど、それでも隣にいてくれるナマエのことは何があろうと守るって決めてんだよ。お前にとやかく言われる筋合いはねぇ」
「あら、人間に出来ることなんて高が知れているのに強気なことを言うのね」
2人の間にバチバチとした光が見える気がする。そう思いながら、ナマエは2人の間に分け入ってそれぞれに“どうどう”というように、手のひらを向けた。
「2人ともストップ。人間とサーヴァントじゃ全然違うんだから、強さで張り合わないの」
「なによ。邪魔しないでちょうだい?ナマエ」
「さっきからこの女何なんだよ。サーヴァントだか何だか知らねぇけど、一回締めさせろ」
「あら、やれるもんならやってみなさい?私に触れる前にこの脚で切り刻んであげるから」
「そんなデカブツなら余裕で避けられんだよ。お前のそのほっそい体、へし折ってやっからな」
「ストップって言ってるでしょう!」
路地裏に彼女の怒号が響いた。普段声を荒げることのない彼女の怒号を聞いた二人は驚いてその場に固まった。
明らかに怒っている表情をしているナマエは二人を交互に見てから、呆れたと言いたげなため息を吐いた。
「いい?竜胆は人間でメルトちゃんはサーヴァント。力の差があるんだよ。それぞれに向いた“相手”がいるでしょ?良くも悪くも同じ土俵で張り合えないの。だから力で張り合うのはやめて」
「……悪かった」
「……今回はナマエに免じて矛を収めてあげるわ」
それからしばらくして、ナマエの強火である二人はなんだかんだお互いの実力とナマエへの思いを認め合って仲良くなり、通常時は竜胆が、任務中はメルトリリスがナマエのことを守るという暗黙の協定が二人の間に結ばれた。
「これから“任務”だろ。気をつけて行けよ」
「うん、ありがと。それじゃあ行ってきます!」
「メルト、ナマエのこと頼んだからな」
「当たり前よ、私を誰だと思っているの?今日も傷一つ付けずに任務を終わらせてやるわ」
「二人とも仲良くなったんだね。よかった」
「……まぁ、そうだな」
「私には遠く及ばないのは当たり前だけど、そこらの人間よりはずっとマシくらいには思っているわ」
「そっか。二人が仲良くなってくれて嬉しいよ。安心した」