隣の芝生は青いってこと



「わりぃ、助かる」

技術の時間、中学生にもなるとパソコンを使う授業が出てくる。
パソコンを扱うのが苦手だった三ツ谷の隣に座った彼女――ナマエは、授業内で出された指示に少し手間取っていた彼を手伝っていた。
ナマエは親の影響もあり、幼い頃からパソコンに触れていたので基本的な操作は一通りスラスラと行えた。そのため、今回の指示もすぐに理解して一足先に終わらせていたのだ。

「いつも裁縫の課題とか手伝ってもらってるお礼」

パソコンが扱える彼女は、彼と反対に裁縫があまり得意ではなかった。
できないわけではないものの、思った通りにできないことがたまにあり、時間がかかりがちだったのだが、それを手伝っていたのが三ツ谷だった。

技術の授業が終わり、皆がぞろぞろとパソコン室から出ていく。ナマエと三ツ谷は多少遅れて目標まで到達したので、皆よりも少しだけ遅れて席を立った。
同クラスの人たちの群がりの少し後ろで、並んで歩く2人は先ほどの技術の授業の話をしていた。

「お前すげーよな、キーボードあんな早く打てるとかさ。オレにはできねーや」
「慣れだよ。私だって三ツ谷みたいにミシンを扱えるわけでもないし、綺麗に縫い物ができるわけでもない。だけど、それができるのは今までやってきたからでしょ?」
「まぁー……確かにそうだな。ああいうのも慣れなんだな」
「そうだよ。私から見たら、服まで作れちゃう三ツ谷の方が凄いと思うし。隣の芝生は青いってやつだね」
「なるほど確かに」

そう言って2人は小さく笑い合った。
その後、お互い他愛もない話をしながら教室へ戻り、放課後を迎えた。
それぞれ部活に所属しているので、荷物をまとめて部活を行う教室へと向かう。三ツ谷は家庭科室へ、ナマエはパソコン室へ。途中までは同じ道のりなので、先ほどと同じように雑談をしながら同じ方向へと歩いていく。
少しして、2人の向かう先が分かれる地点である階段の前へと着いた。

「じゃあまた明日」
「おう、また明日」

この日を境に、パソコンを使う授業の時はナマエにフォローをしてもらっている三ツ谷の姿が見られるようになったのだった。

「うおっ、入力する文字が全部大文字になった」
「それはキャピタルロック掛かってるからだね。こことここを押せば……ほら直った。やりがちだから気をつけてね」
「ありがとな、ナマエがいてくれて助かった」
「いえいえ」