幼馴染の双璧




彼女と彼らは小学生の頃からの知り合いである。とはいっても当時彼らと特別仲が良かったわけではない。関係としてはいちクラスメイトとして多少話したことがある程度だ。
彼らと彼女は同じ中学に進学したが、進学後すぐに彼らは不良として名と顔が知られ、彼女とは更に疎遠となった。
クラス分けの結果彼らと同じクラスになったが、教室内で姿を見かけることは未だあまりない。

彼らと同じ小学校から進学してきた人たちは彼女以外にも多々居たが、皆一様に彼らのことを恐れていた。
なにせ彼らは名の知られた不良。大概の人は“不良”と聞くだけで距離を取るものだ。
ただ、彼女だけは特に何も思っていなかった。理由は簡単で、彼女は彼らに対して“恐怖”を感じていなかったから。もっと言えば、普段の彼らは皆が思っている程怖くはないことを知っているから。

「遅かったじゃねェか」
「学校お疲れ様!」

校門から出て少し行った先に見慣れた単車が2台、その近くに橙色の髪の少年と青色の髪の青年――ナホヤとソウヤの姿があった。
小学校の頃からこれと言って深く関わったこともなく、なんなら今はほぼ疎遠になっているような2人に彼女はえらく気に入られていた。

中学に進学後初めての登校日に2人に声をかけられ連絡先を交換し、翌日から“学校が終わったら連絡しろ”と言われ、気づけば帰りは家まで2人に送ってもらうことになっていた。
最初こそ“なぜ?”という疑問と困惑もあり、少し距離のある関係だったが、今はもう仲の良い友人のような関係となっていた。

「今日もありがと〜。今日はどっちの後ろに乗ることになってるの?」
「今日はオレの後ろ」
「あれ、昨日もナホヤ君じゃなかったっけ?」
「昨日も今日も、オレがじゃんけんで勝ったんだよ」
「兄ちゃん、じゃんけん強いんだよね」
「そうなんだ。あ、じゃあ明日はソウヤ君の後ろに乗せてくれる?」
「えっ!?あ、うん。いいよ!」
「やった〜!」
「なんでいきなり指名制になってんだよ」
「だって、そうしないとずっとナホヤ君の後ろに乗ることになりそうだから。それは面白くないなって思って」
「はぁ?んだよそれ。オレの後ろじゃ――」
「ってことで、明日はよろしくね。ソウヤ君」
「人の話ぶったぎんじゃねェ!」

そんな会話をしている3人の後ろから、1人の男子生徒が近づいてきていた。
それに気づいた2人は、途端にすっと冷めた表情をして近づいて来ている男子生徒の方を見た。

「彼女から離れろ!」
「あ?お前、誰?」
「ナマエちゃん、知り合い?」
「うーん……。あっ、彼は同じクラスの人だよ」

男子生徒は“彼女が不良に囲われている”と思い、勇気を振り絞って助けに来たのだが、当の彼女としては“友人と話しているだけ”なので、その男子生徒の行動と言動にハテナを浮かべていた。

「オレたちに何か用でもあンのか?ってか、なんだよ“ナマエから離れろ”って。テメェ何様だ?」
「ひっ!……か、彼女はお前たちみたいな不良と仲良くするような人じゃないんだ!どうせ彼女のことを脅すか何かして無理やり一緒にいさせてるだけだろ!ミョウジさん!今助けるからっ!」
「って言ってるけど……」
「取り敢えず、今にも殴りかかりそうになってるナホヤ君を止めるのが先だと思う」

パキパキと指の関節を鳴らし、今にもその拳を構えて放ちそうになっている彼の肩にソウヤが手を置き、鳴らしていた拳にナマエが手を置く。

「ここで喧嘩は良くないから、一旦拳を下ろして?」
「ここでこの人殴ったら騒ぎになっちゃうから、一旦抑えよう?」
「……チッ」

未だ青筋を立てているナホヤだったが、2人にそう言われ渋々拳を下ろした。
それにホッと息を吐いて男子生徒の方を見るナマエ。男子生徒は“訳がわからない”という顔で彼女のことを見ていた。

「2人はね、私の大事な友達なの。顔と名前が有名な不良だけど、皆が言うほど怖くはないし悪くもないよ」
「なに、言ってるんだよミョウジさん……。不良だよ?そいつら2人とも……そんなのと一緒にいたらミョウジさんが――」
「そんなのって、なに?あんたに何の関係があるの?2人とも私の大切な友達なの。あんた2人の何を知ってるの?」

先ほどまで“どうどう”とナホヤをなだめていたはずの彼女が、明らかに怒っている表情で男子生徒にそう言った。
それを受けた男子生徒は、一瞬言葉にならない声を挙げると逃げるようにその場から走り去っていった。

「良かったのかよ、あんなこと言って」
「明日から大変だったりしない?」
「あー……そうね、私も不良認定されるかも。まぁでも、成績そこそこ取ればいいだろうし、今でも学校での素行は悪くないはずだし、問題ないかな〜」
「そっちもだけど、クラスの奴らとか教師とかって人間関係の方もあるだろ」
「まぁ、それはそれで私の問題だから大丈夫だと思う。というか、友達を馬鹿にされてるのに黙ったままでいる方が嫌だ」

そう言って彼女は笑った。
昔から変わらない彼女の笑顔、それが2人が彼女と交流を持つことを決めた要素だった。
そんなことは知らない彼女は、楽しそうに笑って2人に声をかけた。

「今日は金曜日だからちょっと寄り道して行きたい!2人とも付き合って!」
「いいよ!どこか寄りたい場所があるの?」
「特になし!」
「んだそれ。それじゃあどこにも寄れねェだろ」
「あははっ!確かに!じゃあさ、2人の好きなところに連れてってよ。ちょっとくらい遠くてもいいからさ」
「いいの?いつも“帰りが遅くなるから”って言ってたのに……」
「いいよ!ちょっとくらいそういうことした方が、中学生っぽいでしょ?」
「こりゃあ“不良候補”だなぁ、ナマエ」
「これくらいで不良候補は困っちゃうな〜」

その後、3人でコンビニに寄って駄菓子やジュースを買い込み、少し離れた小さな公園で3人仲良く駄菓子パーティーをしたのだった。