貴方と始める新生活準備
「ナマエさん、お皿はどっちがいいですか?」
「うーん……右!」
とあるショッピングモールの食器売り場。休日ということもあり、あちこちが人で賑わっている。そんな人混みの中に、一組の若い男女がいた。
しっかりした印象のある男性からナマエ≠ニ呼ばれた女性は、楽しそうに微笑み彼が右手で持っているお皿を指差した。
「あっ、ねぇ直人くん。あれ可愛くない?」
「どれですか?……あぁ、確かに」
「ねぇ、あれ色違いで買わない?ちょうど同じものが色違いであるみたいだし」
「いいですよ」
彼女が見つけたのは柔らかな印象を与える薄いグレーのマグカップと、パステルカラーの優しい水色のマグカップ。対になるように並べられていたそれを手に取った彼女は、そのまま彼の持つ買い物かごに入れた。
それからもそれぞれいい≠ニ思った食器類をかごの中に入れて行き、一通り買う予定だったものが揃ったところでレジへと向かった。
「いっぱい買ったね」
「そうですね」
重さ別に分けて入れた買い物袋。重い方を彼が、軽い方を彼女がそれぞれ手に持ち、駐車場に停めている彼の車へと向かう。二人の足取りはゆっくりで、後ろ姿はどこか幸せそうだ。
車に到着し、後部座席の扉を開ける。座席には既に今日購入した食器以外のものが入った袋がいくつか乗っていた。
ある袋には衣類が、ある袋には小さな小物が。二人はそんな袋たちを少しずつ動かして背もたれ側にスペースを作ると、そこに今持ってきた食器類が入った袋を乗せた。
「今日はひとまずこれくらいにしておきましょうか」
「うん。いっぱい見て買い物してちょっと疲れちゃったし」
「そうですね。……あ、もうお昼時か。ナマエさん、何か食べたいものはありますか?」
「えっ!もうそんな時間?うーんそうだなぁ……。直人は何か食べたいものはないの?」
「僕ですか?……近くに美味しいと評判のイタリアンレストランがあるんですけど、そこはどうですか?」
「いいね!それじゃあそこに行こう!」
後部座席の扉を閉めて彼は運転席の、彼女は助手席の扉を開き中に入った。
バタン、と扉を閉めてシートベルトを付ける。運転席に座った彼が隣の助手席に座る彼女に一瞬視線を向けると、車のエンジンをかけた。
「お昼食べたらどうしよっか」
「とりあえずまずは、今日買ったものたちを片付けた方がいいでしょう」
「そうだね。……ふふっ、楽しみだね。直人」
「……そうですね」
二人は幸せそうに微笑み、目的地のレストランへと向かった。
レストランで昼食を終えたら、帰る場所は一つ。二人がこれから一緒に暮らす家だ。
カチカチと、これから二人が一緒に使っていく食器たちが音を立てた。