5



「ただいまー」
「お邪魔、します……」

『シンイチロー』の実家は、レトロな雰囲気のある大きな家だった。引き戸の玄関から中に入ると、ドタドタという賑やかな足音が近づいてきた。

「おかえり! シンイチロー!」
「オウ、ただいま」

 廊下から走って出迎えてくれたのは、柔らかなシャンパンゴールドの髪をした少年だった。見た目からして小学生くらいであろう彼は、『シンイチロー』の後ろにいた彼女に気づくと、目をぱちぱちと瞬かせて不思議そうな顔をした。

「シンイチロー、後ろの女、誰? カノジョ?」
「ばっ! ちげぇよ! コイツはー……ダチだよ。ちょっとワケありでな、少しの間この家に居てもらおうかなと思ってよ」
「へぇー……」

 訝|《いぶか》しむ目を向けられた彼女は、思わず一歩後退った。それに気づいた『シンイチロー』は、少し眉を下げて微笑み「大丈夫だから、気にすんな」と声をかけた。
 彼の後に続いて家に上がった彼女は、そのまま彼に案内をされ、ある部屋に入った。そこは居間だったようで、ダイニングテーブルでは、先ほどの少年とはまた少し違った金髪の少女と、白髪と厳格そうな表情が特徴的な老人――『シンイチロー』の祖父だろう――が食事をしていた。

「真兄おかえ――って誰その女の人!?」
「オレの大事なダチだよ。事情があって家に帰れなくてな、しばらくウチに泊めてやろうかと思って、連れて来たんだ」
「ど、どうも……。ミョウジナマエと言います」

 彼女がおずおずと頭を下げると、それに合わせて少女も頭を下げた。少年は自席なのであろう奥左側の椅子に座り、途中だった食事を再開した。
 いつの間にか食べ終わっていた老人が、その強い視線を真っすぐ彼女に向けた。それを受け、彼女は特に後ろめたいこともないのに、少しだけ怖気づいた。

「ミョウジ、と言ったか。オマエさん、荷物とかはどうしたんだ」
「えっと……荷物は、なくて……」

 彼女が目を覚ました時、そこに彼女の荷物は何もなかった。バッグはもちろん、財布やスマホなど、全てがなかった。文字通り、身一つでそこに倒れていた。幸いだったことは、服装は仕事の時に着ている私服のままだったということだ。
 しかし、現状をありのままに話しても信じてもらえる保証はない。彼女は事情をどうやって説明するか悩み、次の言葉が出てこなかった。

「じぃちゃん、あんま問い詰めてやらないでくれよ。ナマエは悪いヤツじゃねぇ、オレが保証する」
「……家に泊めるのは問題ないが、部屋やその間の着替えはどうするつもりだ?」
「あー……オレが何とかする! とりあえず明日、仕事終わりにナマエと一緒に買い物に行ってくる。部屋は……オレの部屋を貸す。オレは適当にその辺で寝れるし」
「えっ、いやそれは――」
「ということで! 今日からよろしくな、ナマエ!」

 彼はニッと彼女に笑いかけた。しかし、彼女は抱いた不安をどうにも拭えなかった。