双子と仲の良いお姉さんの話




「……よぉ」
「よー」
「おや、数日振りだね。珂波汰くん、那由汰くん」

買い物帰りのナマエが道を歩いていると、前方から見た目がそっくりな色素の薄い双子、cozmezの珂波汰と那由汰が歩いてきた。
彼らと彼女は少し前にとあるきっかけで出会い、それからたまに一緒に食事をする仲となっていた。

「今日の飯ってなに?」
「んーとね、ハンバーグだよ」
「ふーん……」
「へー……」
「……一緒に食べる?」

二人が何かを求めるようなジト目を向けられた彼女は、二人の気持ちを察し、夕食に誘ったのだ。
これは出会った時に夕食前だった場合、大体必ずこの目をされる。それは夕食を一緒に食べたい(ご馳走して)≠ニいう意味。何度か二人と出会い交流をしたことで表情や目、雰囲気などで何となく意味を察せられるようになっていた。

夕食に誘われた二人は一瞬目を見開いた後、キラキラした瞳で嬉しそうに笑うと、声を揃えて「食べる」と答えた。
彼女は「分かった」と返答すると、二人を連れて自宅へと戻っていった。

「ただいまー、っと……。私は買ってきたものとかを片付けてくるから、二人は手を洗って今で待ってて」
「はーい」
「ん」

二人は洗面所のある脱衣所へと向かって行き、彼女はそこの前を通って冷蔵庫へと向かい、買ってきた食材をしまっていった。
やがて手を洗い終えた二人が脱衣所から出てきて、彼女の後ろを通り、その先にある扉を開いて居間へと入っていった。

「ジャケットとかは適当にかけておいていいよー」
「ん、わかった。ありがと」
「わかった」
「じゃあ今から支度するから、ちょっと待っててね」

そう言って居間へと続く扉を閉め、廊下に設置されたキッチンへと向かう。
シンクとコンロの間にあるスペースへ置いておいた食材たちを順々に処理していく。まずは玉ねぎを覆う一番外側の茶色い皮を剥がしていく。白い部分が見えたら根っこのついた部分を切り落とし、半分に切る。その後平らな面を下にして切り落とさないよう気をつけながら切り込みを入れていく。
切り込みが入れ終わったら、今度は切り込みとは水平に包丁を入れていく。こうすることでそれとなく玉ねぎが細かくなるので、適当に刻み、ハンバーグのタネに入れる玉ねぎの微塵切りが完成した。

「俺も何か手伝う?」

玉ねぎをボウルに移したところで居間の扉が開き、隙間からひょっこりと那由汰が頭を覗かせてそう彼女に声をかけた。
彼女は小さく首を振り「大丈夫だよ、ありがとう」と返すと、彼は「そ」と一言言って居間へと戻っていった。

「さて、残りもちゃちゃっとやっちゃうぞー!」

*〜*〜*

「おまたせー。ハンバーグできたよー」

彼女がそう言いながら二人の前に置いた大皿には、美味しそうなデミグラスソースのかかったハンバーグが1つずつ載っていた。よく見るとハンバーグの上には目玉焼きが載っている。彼女なりのおもてなしだ。
二人は目を少し見開いてから、ニッと嬉しそうに笑った。その姿を見た彼女の顔には自然と優しい微笑みが浮かんでいた。

テーブルの上に三人分の食事が置かれたところで、彼女が自席に着いた。そして三人で声を揃えて「いただきます」と言って食事が始まった。

「んーっ!旨い!」
「この目玉焼きも少し硬めじゃん!」
「お口に合ったようでよかった。おかずはそれしかないけど、ご飯は少し多めに炊いたし、冷凍のもあるからおかわりもできるよ」
「……いや、これだけ食えりゃあ十分だ」
「あ、ナマエ。飲みもんちょーだい」
「麦茶でいい?」
「ん」

彼女は席を立ち、再び廊下へと出る。三人分のマグカップを選び、片手の指を取っ手に通して引っ掛けると、空いているもう片手で冷蔵庫を開け、2Lペットボトルの麦茶を取り出し、そのまま器用に居間の扉を開けて中へと戻った。
指に引っ掛けていたマグカップをテーブルの上に置き、ペットボトルの麦茶を注ぐ。注ぎ終わったものから順に二人に渡し、最後に残ったマグカップを自分の席の近くに置いた。

「そういえば、遅くなっちゃったけどParadox Live、優勝おめでとう。次は武雷管?との勝負だったよね」
「ありがと。そうだよ」
「武雷管との対決で披露する二人の曲、今から楽しみだよ。絶対現地で応援するから!」
「ん、ありがとな。まぁ武雷管だろうがなんだろうが、俺たちが勝つに決まってるけどな」
「cozmezは、二人でいれば最強≠セもんね」
「あぁ」
「それに、今の♂エたちは今までの俺たちよりもずっとつえぇよ」
「……そうだね。素人だけどずっと二人を応援してきた私にも、今の二人は今までよりも大きく成長した感じがするよ」
「だろ?」

ここでタイミング良く食べ終わった二人が、声を揃えて「ご馳走様」と言った。喋ることに集中しすぎてしまった彼女は、そこで料理へと意識が戻り、再び食べ始めた。
先に食べ終わっていた二人は、ティッシュで口を拭き、マグカップの中の麦茶を飲んでいた。

「ご馳走様でした、と……。さて、じゃあ片付けしちゃうね。二人はどうする?もう帰る?」
「あー、そうだな。そろそろ曲作りもしねぇといけねぇし」
「いい気分転換になったよ。相変わらず料理もうめぇし。ごちそーさん」
「また食わせろよ」
「分かった。食べたくなったらいつでも連絡してね」
「おう。それじゃあ――」
「「お邪魔しました」」

二人はそう言って彼女の家を出て行った。
残された彼女は、玄関が完全に閉じるまでそちらを見ており、ガチャンと完全に閉まる音がしたところで扉の方へと向かい鍵をかけた。

「さーてと。次は何を作ろうかね。たまには少し頑張ってみるのもあり、かな」

次≠フことを考えながら、彼女は綺麗に平らげられた二人の食器を引き、後片付けを始めたのだった。