第七王子と魔人、と七夕



あーあ、と吐かれた嘆息が何故か耳に残って、どうしたのかと窓辺で空を見上げる魔人を見た。
「どうしたんだグリモ」
「うん?いえ大したことじゃないんですけど……今日は星が綺麗でしょうに雲で星が見えないのが残念だなあと思ってですね」
言葉に、首を傾げた。今日は朝から雨が降っていて空が晴れていたときなんて無い。特別星が綺麗だなんて、いつわかったのだろう。
「……昔は、七夕って行事があったんですよ」
使い魔が話始めたのは、かつて存在したとされる神々の、そしてそこで生きたとされる人々の話だった。
「へえ、なかなか興味深いな」
「でしょう?まさか今はこの話自体が廃れてるなんて思いもしませんでしたぜ」
言って、外を静かに見上げる魔人は。この数百年間ずっと地下で封印されていたのだ。
なあ、と声を掛ける。
すぐに、なんです?と返される声音は落ち着いていて、普段の溌剌さが感じられない。
「───雲、払ってきてやろうか」
言葉に魔人は笑って、一瞬真顔になって首を横に振った。
「良いです。……また、次があるんですから!」
にっと口角を上げて魔人が窓から離れる。
もう遅いですし寝る準備して下さい、と急かされて寝具に潜り込む。
「……晴れると良いですねぇ」
明かりを消され暗くなった部屋で呟かれた言葉に、来年は見れると良いな、と返した。



七夕に書いた話です
サルーム王国、こういう伝承あるたりするかな




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