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手を伸ばす。太陽を遮る。
指と指の間からのぞく雲ひとつない空。
今日はあいにくの晴天だった。
夏の光に焦がされた鉄柵を無理矢理握って、乗り越えた。炎天下に晒され続けた僅かな面積のアスファルトを素足で踏みしめる。
眼下に広がる街並み。人々の喧騒と蝉の唄。まるで別世界のようだ。
そして、足を踏み出そうとしてためらう。
――本当に、いいのか?
何度も胸中で繰り返した問いが、また蘇る。
生ぬるい風にプリーツスカートがはためく。一歩先は奈落の底だと本能が警鐘を鳴らしている。
わたしは案外、優柔不断な性格だったらしい。
今になって色んなことが頭をよぎってしまう。
悲しい記憶ばかりなのに、いざ離れるとなると名残惜しいのはなんでなのか。
でも。もう、決めたことなんだ。
二度とこの故郷に帰れなくなったとしても構わない。どんなに痛くたって苦しくたっていい。
――わたしは絶対にあの子を見つける。
ポケットに丁寧に仕舞い込んでいたリボンを握りしめる。まだ、温かさが残っているような気がした。
そして。
迷いを振り払って、わたしは跳んだ。
ただただ強烈な浮遊感が感覚を支配する。
次に来るであろう衝撃に思わず身構えて――、
『ナミネ!』
誰かに呼ばれた気がした。
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