太陽の光をまぶた越しに感じた。
暖かい。
何度か瞬きをしながら、ゆっくりと目を開く。
体が思うように動かないけれど何とか首を動かすと、テーブルで書き物をしている少年と目があった。
少年はひどく驚いた様子で、けれど途端に嬉しそうに破顔した。

「やっと起きたな!」
「ナランチャ……?」

ああ、彼は、そうだ、生き残った。
きっと、私も。

「おう!いまみんな出払っててよぉ。アメリアの護衛は俺とホルマジオなんだ。呼んでくるから待ってろよ!」
「え、ちょっと……」

ナランチャは引き止める間も無く部屋から走り出ていくとすぐにホルマジオを連れて戻ってきた。
ホルマジオは私を視界に入れると、先ほどのナランチャと同じように至極驚き、困ったように笑ってベッドに座った。
ナランチャにリゾットを呼ぶように言いつけてホルマジオは私の少し細くなったような気がする手を取った。

「おめーよ、一ヶ月も眠りこけやがって……ほんとに、よぉ、しょぉがねーよなぁ……リーダーも荒れるし、ソルベとジェラートも荒れるし散々だったんだぜ。……俺は、もう……目覚めねぇのかと思って……」
「ホルマジオ……私、そんなに寝てたのね」
「ああ、そうだぜこの寝坊助ヤローが」

吊られている点滴の管を避けてホルマジオが私の肩を小突いた。
ゆっくりと彼の元へ戻るその手を取って自分の頬に当てる。

「ごめんなさい……全てが終わると思ったのよ、もう、解放されるのだと」
「……終わらねぇよ。終わらせねぇだろ、リーダーがよぉ」
「そうかしら」
「なぁ、アメリア……んな悲観しなくても、暗殺チームのボスも悪くねぇと思うぜ。この4ヶ月、楽しかっただろ?」

そうかもしれない、そう、なのかも。
今までとは、状況も、この先の運命もきっと違う……ホルマジオの言う通り、悪くないのかもしれない。
何もかもを投げ捨ててこの28年の幕を閉じる必要は、もうないのかも。
ああ、彼に会いたい。

「ねえ、ホルマジオ……」
「分かってる。だから呼びにいかせただろ」

ホルマジオが扉の向こうを見透かすようにそちらに視線を促した。
私には分からなかったけれど、すぐに廊下を走るような音がして、扉が乱暴に開かれた。

「アメリア……!」
「暗殺者がそんなに音を立てるものじゃないわ、リゾット」

私の軽口を無視して、リゾットは病み上がりの体を気遣うようにそっと抱きしめてきた。

「1か月も、眠るな」

ため息とも、安堵とも取れる重苦しい吐息を吐き出し、リゾットは僅かに手の力を強めた。
ホルマジオが何かを言おうとしたナランチャの口を塞ぎ、眉尻を下げてはウインクをして去っていった。

「リゾット……」
「お前が死のうとしているのは知っていた。だから、ブチャラティにもそれを話し、可能なら奴の手も借りて、お前を引き止めようとした」

淡々と話す声音とは裏腹に、リゾットの手はひどく熱い。

「お前が何者で、どこから来たのかは知らないが……」

その言葉は、私の嘘を知っている証。
彼は。
瞬きの中に、遠い異世界の、前世の記憶を閉じ込める。
リゾットの声が、脳を揺らすように反響し、思わず涙が出た。

「お前の行く先には共にいたいと思う」

苦しくて、怖いことは、もう全て終わった。
だから、貴方がそれを望むなら。
いいえ、私も、同じ望みを持つのだから、貴方がそれを許してくれるなら。

「私は、望みすぎなのかもしれない、けれど……それでも、私も、貴方と共にいたいわ……」