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コレクション
ひとつ目。自引きできず。
ふたつ目。自引きできず。
みっつ目。自引きできず。
よっつ目。…………。
「……次で十二個目になるな。何回引く気だ?」
「……もう引かない」
「そんなに欲しいなら買い取るか盗む手もあるぞ」
「しない。ぜったいやだ」
「盗ってこようか」
「やだ」
「もう盗ってきてる」
はい? という言葉の前に私が必死にちまちま買ってきていたトレーディングのおもちゃの持ってなかった種類を出したクロロは、薄く笑みを浮かばせながら「どうする?」と問いかけてくる。
コンプリートはしたい。欲しかったやつも出てきていない。でもこれ以上はだぶる可能性しかない。使うと決めた額はとっくに過ぎている。
「まあ、お前がいらないっていうならその辺の欲しがってる奴に渡すけど」
「……さいてい」
「どうする? ここで逃したらもう売られないんだろ? 俺は興味ないから、どっちでもいいよ」
「……う……あ〜〜……ほんとやだ」
これだからクロロと来るのは嫌なんだ、刺したい。
言いながらポケットマネーの確認をして、うーとまた唸りながらクロロを見上げる。
たかがおもちゃだ。そりゃあ買い占めれば手に入るのはわかっている。買い占めるのが簡単なのもわかっている。
「……私は手にしたいというより、手にするまでの過程が大事というタイプで。愛着や執着はだからこそくるのであって」
「みたいだな」
「ゲームだってルールの中で戦うから楽しいんだよ。殺しだってそうだし。簡単に殺せる相手に全力尽くしたらつまらないわけで」
「それで死んだら元も子もないな」
「盗みだってスリリングなほうがいいもんじゃないの?」
「なら俺から盗ってみるか」
「そういう話ではなく! 私そもそも盗み嫌いだし! いちばんのルール違反じゃんか!!」
「わかったわかった。手に入らなくてもいいんだな?」
「ちっ……がくも、ない……けど……!」
ううう、こいつほんときらい。
下唇を噛みながらクロロとクロロの手のひらにころんと転がるおもちゃを見比べて地団駄を踏む。
顔を覆ったり、一周その場で回ってみたりとわけのわからない行動を繰り返してから、渋々と財布から数百ジェニーのコインを差し出す。
ぱちり、と一度訝しげに瞬きをしたクロロは、私が差し出した手におもちゃをぽとんとおとしただけだった。
「別にこれくらいの金はいい」
「よくない……よくない、それこそもう最悪だ。もらうとかもう屈辱でしかない。買うよせめて。買わせて」
「ルール違反がとか、過程がとか言いながら、結局欲しいものは欲しいんじゃないか。矛盾だらけなものだ」
「うるさいな。私だってクロロみたいなばか野郎がいなければ自制して正々堂々ファイトしてるんだよ。わかるか?」
「わからない。意思が弱いって主張で合ってるか?」
「……ああもう、そうだよ!!」
無理やりクロロの手をひっつかんで、数百ジェニーを握らせた。これでパンでも買えば!? と負け惜しみを叫び踵を返すも、もやもやは全く解消されそうにない。
悔しい。悔しいが合ってる。めんどくさい人間だとわかっているが、私はクロロの言う通り、矛盾した人間なのだ。
過程が大事だ。過程なく手にしたものは何も愛着がわかない。でも欲しいものは欲しい。ギブアンドテイクも嫌だ、自分の力でなんとかしたい。でも手を差し伸べられたら、それは受け取ってしまう。
つまるところ、ひとりで生きるのがいちばんいいのだ。なんて言ったらきっと、クロロは「歪んでる」と返すのだろうけど。
残念ながら私は、クロロほど冷静で合理的な人間では、ないのである。
「腹をたてているところ悪いんだが、急ぎで頼みたい仕事があるんだ」
「はやく殺されてほしい」
「お前が今日買ったおもちゃの製造元に、面白そうな社員がいるんだよ。そいつの能力を見てみたい」
「能力とかなくなればいいのに」
「できるだろ?」
置いていこうとしてもクロロの歩幅と私の歩幅は全然ちがう。
歩いても歩いてもついてくるクロロに、今日はほんとについてないなと心底どんよりしながら、自らの念を発動させる。
対象が作ったものを手に入れ代償にすることで、対象の情報を得て、使うことができる能力。得る情報と使える範囲は、手にしたものの量で変わる。
クロロがくれたのはだぶってないおもちゃだったから、代償になるのは私が自引きした別の種類のおもちゃだ。普段なら自分のコレクションを犠牲になんてぜったい嫌だけど、クロロがくれたことでコンプリートはできたいま、だぶりはあってもなくても、どうでもいいような、気がしなくもない。
「次に依頼する時は、私に関係のない物にしてほしい」
「便利なんだ、お前の能力。盗む前に見れると、俺も判断に迷わない」
「だけど私の能力を盗まないのは、自分が盗ったものを壊したくないから?」
「元も子もないだろ?」
「ほんとにね。他人のものならいいやってするあたり、とてもさいてい」
舌打ちをしながらポケットの中にあったおもちゃを壊す。
私もめんどくさいコレクターだけれど、コレクターではないクロロもまた、めんどくさい業を抱えているなと思いながら。
- 11 -
ふたつ目。自引きできず。
みっつ目。自引きできず。
よっつ目。…………。
「……次で十二個目になるな。何回引く気だ?」
「……もう引かない」
「そんなに欲しいなら買い取るか盗む手もあるぞ」
「しない。ぜったいやだ」
「盗ってこようか」
「やだ」
「もう盗ってきてる」
はい? という言葉の前に私が必死にちまちま買ってきていたトレーディングのおもちゃの持ってなかった種類を出したクロロは、薄く笑みを浮かばせながら「どうする?」と問いかけてくる。
コンプリートはしたい。欲しかったやつも出てきていない。でもこれ以上はだぶる可能性しかない。使うと決めた額はとっくに過ぎている。
「まあ、お前がいらないっていうならその辺の欲しがってる奴に渡すけど」
「……さいてい」
「どうする? ここで逃したらもう売られないんだろ? 俺は興味ないから、どっちでもいいよ」
「……う……あ〜〜……ほんとやだ」
これだからクロロと来るのは嫌なんだ、刺したい。
言いながらポケットマネーの確認をして、うーとまた唸りながらクロロを見上げる。
たかがおもちゃだ。そりゃあ買い占めれば手に入るのはわかっている。買い占めるのが簡単なのもわかっている。
「……私は手にしたいというより、手にするまでの過程が大事というタイプで。愛着や執着はだからこそくるのであって」
「みたいだな」
「ゲームだってルールの中で戦うから楽しいんだよ。殺しだってそうだし。簡単に殺せる相手に全力尽くしたらつまらないわけで」
「それで死んだら元も子もないな」
「盗みだってスリリングなほうがいいもんじゃないの?」
「なら俺から盗ってみるか」
「そういう話ではなく! 私そもそも盗み嫌いだし! いちばんのルール違反じゃんか!!」
「わかったわかった。手に入らなくてもいいんだな?」
「ちっ……がくも、ない……けど……!」
ううう、こいつほんときらい。
下唇を噛みながらクロロとクロロの手のひらにころんと転がるおもちゃを見比べて地団駄を踏む。
顔を覆ったり、一周その場で回ってみたりとわけのわからない行動を繰り返してから、渋々と財布から数百ジェニーのコインを差し出す。
ぱちり、と一度訝しげに瞬きをしたクロロは、私が差し出した手におもちゃをぽとんとおとしただけだった。
「別にこれくらいの金はいい」
「よくない……よくない、それこそもう最悪だ。もらうとかもう屈辱でしかない。買うよせめて。買わせて」
「ルール違反がとか、過程がとか言いながら、結局欲しいものは欲しいんじゃないか。矛盾だらけなものだ」
「うるさいな。私だってクロロみたいなばか野郎がいなければ自制して正々堂々ファイトしてるんだよ。わかるか?」
「わからない。意思が弱いって主張で合ってるか?」
「……ああもう、そうだよ!!」
無理やりクロロの手をひっつかんで、数百ジェニーを握らせた。これでパンでも買えば!? と負け惜しみを叫び踵を返すも、もやもやは全く解消されそうにない。
悔しい。悔しいが合ってる。めんどくさい人間だとわかっているが、私はクロロの言う通り、矛盾した人間なのだ。
過程が大事だ。過程なく手にしたものは何も愛着がわかない。でも欲しいものは欲しい。ギブアンドテイクも嫌だ、自分の力でなんとかしたい。でも手を差し伸べられたら、それは受け取ってしまう。
つまるところ、ひとりで生きるのがいちばんいいのだ。なんて言ったらきっと、クロロは「歪んでる」と返すのだろうけど。
残念ながら私は、クロロほど冷静で合理的な人間では、ないのである。
「腹をたてているところ悪いんだが、急ぎで頼みたい仕事があるんだ」
「はやく殺されてほしい」
「お前が今日買ったおもちゃの製造元に、面白そうな社員がいるんだよ。そいつの能力を見てみたい」
「能力とかなくなればいいのに」
「できるだろ?」
置いていこうとしてもクロロの歩幅と私の歩幅は全然ちがう。
歩いても歩いてもついてくるクロロに、今日はほんとについてないなと心底どんよりしながら、自らの念を発動させる。
対象が作ったものを手に入れ代償にすることで、対象の情報を得て、使うことができる能力。得る情報と使える範囲は、手にしたものの量で変わる。
クロロがくれたのはだぶってないおもちゃだったから、代償になるのは私が自引きした別の種類のおもちゃだ。普段なら自分のコレクションを犠牲になんてぜったい嫌だけど、クロロがくれたことでコンプリートはできたいま、だぶりはあってもなくても、どうでもいいような、気がしなくもない。
「次に依頼する時は、私に関係のない物にしてほしい」
「便利なんだ、お前の能力。盗む前に見れると、俺も判断に迷わない」
「だけど私の能力を盗まないのは、自分が盗ったものを壊したくないから?」
「元も子もないだろ?」
「ほんとにね。他人のものならいいやってするあたり、とてもさいてい」
舌打ちをしながらポケットの中にあったおもちゃを壊す。
私もめんどくさいコレクターだけれど、コレクターではないクロロもまた、めんどくさい業を抱えているなと思いながら。
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