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Drop Out


――今から100年以上前。

人類にある天敵が現れた。

彼らと人類の間には圧倒的な力の差が存在し、たちまち人類は絶滅の危機を迎えた。
生き残った人類はマリア、ローゼ、シーナの3つの壁を築き、そこで百年の平和を実現させた。

しかし、845年。

突然現れた超大型巨人、及び鎧の巨人によって全ての日常が壁と共に破壊された。
人類はウォール・マリアを放棄。
二割の人口と三分の一の領土を失い、活動領域はウォール・ローゼまで後退した。


そして、




「心臓を捧げよ!」


846年。

超大型巨人によるウォール・マリア襲撃の直後。
歴代の中でも更に入団数が少ない中、訓練兵団103期生の入団式が行われた。







「あれ、リヴァイ?」

そろそろ会議に向かわなきゃなぁなんて考えていたところで、同僚であるリヴァイを見つけた。今日は午後から雨が降るらしいよ、というのは朝早くに早馬で伝えてあげたのに、リヴァイは全身ずぶ濡れで入り口に立っていた。おかしいな、雨も考えて夜の会議に間に合うよう、訓練兵団の方は午後休むんじゃないかと思っていたのだけど…午後も少し見てきたのかな。不思議に思いながら近付けば、リヴァイはタオル寄越せと言ってきた。

「それより部屋に向かった方が早いよ」
「床が汚れんだろ」
「それはもう仕方ないよ。元から床は汚れてしまうものだからね」
「ちっ……」
「それより、何でそんなに濡れてるの?もしかして連絡届かなかった?」
「いいや。届いた。助かった」
「言葉と現状が合ってないね」

その状態でどこが助かったなのか聞きたいところだ。しかし、これ以上立ち話をしてリヴァイに風邪をひかれても困る。まずは部屋に戻さなきゃ、とどちらともなく歩き出した。

「訓練兵は、どう?」

リヴァイは、答えない。答えたくないのかというと、それもまた別だろう。まだ入団して間もないのだから、なんとも言えないといったところだろうか。

ついこの間起きた超大型巨人による襲撃。その傷はまだ癒えきっていない。マリアを失ったことによる生活の苦は、このまま行けば餓死する者も大量に出るのだろう。対策は練っているようだが、果たして有効な案が出るのかと考えると、おそらく何も浮かばない。悪い方向での予測だけが積み上げられていく。
そして同時に、人類は怯えているのだ。超大型巨人は次に、いつ現れるのか。何の前触れもなく現れた以上、次もいつ現れるのかわからない。今日かもしれない。明日かもしれない。そんな恐怖が、ローゼを中心に巡っている。
勿論、常に巨人との戦闘に備えている調査兵団でも、その不安は拭えない。

「…103期は、どんな気持ちで入団したんだろうね。今年は特に入団数が少ないんだろう?やっぱり、憲兵狙いかな」
「俺が知るわけねぇだろ…」
「えぇえ?だって君、洗礼も見てたんじゃないの?貴様は何者だ!ってやらなかったの?」
「それは俺がやるもんじゃねぇ」
「えーっ!君が貴様は何者だ!ってしてるのを想像するのが楽しみだったのに、やらなかったのー!?」

残念だなぁ!と嘆いていれば、リヴァイに睨み付けられた。来年はやってね?と言えば、更に睨み付けられた。
丁度そのあたりで分かれ道に差し掛かったので、じゃあまた後で、とひらひらと手を振った。数時間後の会議では服も着替えていつものさらさらセンター分けの髪で現れるだろう。

「…希望が、見てぇんだとよ」
「え?」

去り際に聞こえたのは、前の質問の答えなのかなぁとざっくり思った。誰を指した言葉なのかはわからない。恐らく誰かの言葉。
だとしても、君から聞くとは思わなかった、意外な言葉ではあったけど。
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