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ア・ドゥエ


 
※アフェットゥオーゾ・フォルティッシモ、アンダンテ コン モートの続編に当たりますが読まなくとも問題ありません。








「あれ?」
「ん?」
「あ」


学食に来て席を探していたら、よく知った顔と一応知ってる顔が向かい合って一緒にいた。二人の手元にはラーメン。私の手元にもラーメン。これはディスティニーだね。


「キッド、それなにラーメン?」
「醤油」
「トラファルガーくんは?」
「塩」
「マジか、私トンコツだからトラファルガーくんの横座っていい?」
「どういうことだよ」


キッドの言葉を無視してトラファルガーくんの横に座る。キッドと違ってトラファルガーくんは自分の荷物どかして椅子までひいてくれた。なにこの人紳士。今まで変な人だと思っててごめんなさい。


「席もう埋まってるんだもん。ごめんねトラファルガーくん」
「あぁ、構わない。知らない仲じゃないしな」
「あ?お前らなんか繋がりあんのか」
「お前だろ」
「キッドでしょ」
「………あぁ?」


何を言ってるんだ、というふうに二人でキッドを見れば、キッドが徐々に動揺を見せてきた。気付いてなかったらしい。こいつほんとにアホだ。

けれど、確かに私はトラファルガーくんとちゃんと話したことはない。友達の友達、みたいなもので、強いて話した会話といえば変な奴だなって言われたのとあとキッドの話だけだ。それも話と言っていいのかわからないくらいのものだけど。


「こいつと関わってんじゃねーよ」
「えー?なんで?」
「トラファルガーは、お前が思ってるより陰険でタチ悪ぃぞ」
「誰が陰険だ」
「非行爆走中のキッドよりいいんじゃない?」
「誰が非行爆走中だ!」
「どう見たって」
「キッド」


ねー、とトラファルガーくんに言えば頷いてくれた。以外とノリもいいらしい。キッドはキッドで2対1の状況が気にくわないらしく、一方的に吠えてる。なにこれ楽しい。


「笑ってんじゃねぇぞなまえ!」
「だっ…だ、って…!私以外にキッドのことからかえる人いるとか…っ思ってなかったし…!」
「おれもお前の友達にこんな面白い奴がいるとは思ってなかった」
「ひー、お腹いたい!」
「言っとくけどな、こいつはおれの友達じゃねぇからな!勘違いしてンな!!」
「えー?」


つれないなぁ、とケラケラと笑う。こうして笑っている間にもラーメンはどんどん伸びていくというのに、これだけ笑っていては食べれるものも食べれない。さっきから私たちに構ってるキッドも一向に箸が進んでいない。あーあ、なにやってんだろう。昼休みもう終わっちゃうじゃん。
このままサボろうかなぁなんて考えだした頃に、私たちと話しながらもしっかり食べていたトラファルガーくんのラーメンが空になった。完食だ。よく食べれるな、とちらりと横を向いた瞬間目が合った。
ニヤリと、トラファルガーくんの口角が上がる。


「ユースタス屋がいらないなら、おれがもらっていくぞ」


……お?
これはなんの振りだろうか、と思いながらも、なんか一瞬ドキドキした。けれどそんな意味じゃないよなってことはすぐにわかったから、私も便乗しようと口を開く。開いたところで、ガタン!という椅子の音。
キッドが突然立ち上がったのだ。


「…手ぇ出したらぶっ倒すぞ、トラファルガー」


キッドはめちゃくちゃ真剣にトラファルガーくんを凄む。トラファルガーくんもトラファルガーくんで真顔でキッドを見返す。私もまさかキッドがそんな行動に出るとは思わなかったので、ぽかんと間抜け面で固まる。
私が一瞬ひっかかったものに、キッドがひっかからないわけがなかった。


「……なに言ってんだ、お前」


くっ、と。こらえ切れなかったのかトラファルガーくんが笑い出した。次第にそれは大きくなり、遂には俯いてお腹を抑え始めた。相当ツボだったらしい。わかる。わかるよトラファルガーくん。私も予想外だった。じわじわくるわこれ。なんかすごくレアな物見た気がする。


「おい…お前…っ!」
「うっわぁ…キッド君なに言っちゃってんの恥ずかしー」
「おま、なまえだって騙されてただろ!」
「私はすぐ気づいたもーん!なんだよキッド私大好きだなー!」
「違ぇよ!そういう意味じゃ…!」
「そういう意味ってどういう意味だ?ユースタス屋」
「テメェ、トラファルガー!」
「安心しなよ、私はキッドの友達だから!」
「なんだ、おれとは友達にならないのか」
「え、なる」
「おいなまえ!だからそいつとはっ!」
「あはは、キッドさんヤキモチですか〜?」
「この……っ!」


キッドが顔を赤くしながらわめく。トラファルガーくんと声をあげて笑った。


チャイムが鳴る。ラーメンは食べ終わるどころか、更に伸びていく。
このまま三人でサボることを決めた。

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