menu
about    main


転生学園


前世というものは案外存在しているらしく、かくいう私も前世の記憶を持っていたりする。しかし、その私が前世だと思っている記憶は随分酷いもので、本当か疑わしいところ。人々は壁の中に住み、人を食らう巨人から逃げている。そんな前世の記憶だ。最初の内は妄想なんじゃないかと思えていたが、歳を重ねるほどにそれが妄想と思えなくなっていた。あまりにも鮮明すぎる。けれど、やはり疑わしい。もっというなら、有り得ない歴史だ。そんな世界があったのだとしたら、一体どうやって今の平和な世界を作り上げたのだと言うのだろう。私自身も巨人に食われて死んだものだから、全く信じられない。

が。…それは、やはり実在した前世だと確信した。

自分一人ならばそこには疑惑しかないが、複数の証言があるならばそれはより確実性を増す。歴史を調べに調べ尽くしていた結果、流れで高校教師になった私は、一人の人物と出会った。
それは、前世での私の上司だった。



*** 



「リヴァイ先生、名簿見ました?」
「あぁ…」
「あ、やっと見ましたか。ねぇやっぱりこれ、あのエレン・イェーガーですかね?写真とかないんですかね」
「あるにはあるが、まだ見れねぇだろうな」
「えええ、残念」
「おい…言っておくが、仮にそうだとしても記憶持ってるとは限らねぇだろ…」
「いやほら、一応ですよ」


どうぞ、と今煎れたばかりのコーヒーを手渡した。リヴァイ先生はそれを素直に受けとる。

リヴァイ先生、もといリヴァイ兵長は、私の前世の上司であった。何の因果か、今の上司でもあるけど。
赴任してきた最初の日。三年生のクラスの内、一つのクラスで副担任をすることになった私は、担任の先生に挨拶をした。まぁそれがその時担任をすることになっていたリヴァイ先生だったわけで、当然私はとても動揺した。まさか前世の記憶にいた人が目の前に現れるとは思うわけがないからね。それで思わず、「リヴァイ兵士長!?」なんて言ってしまったわけで。そしてリヴァイ先生からも「…覚えてんのか?」なんて返ってきた日には、夢でも見てるのかと思ったものです。
そこからリヴァイ先生に話を聞いたところ、どうやらこの学園には前世で会った人がいっぱいいるらしい。しかしそれはただの多生の縁。実際、それだけたくさんの記憶の人がいても、記憶を持ってる人は殆どいないらしい。いいや、殆どどころか、リヴァイ先生は自分以外で記憶持ちな人に会ったことがないらしい。だから私の言葉にはリヴァイ先生自身も驚いたと、本人の口から聞いた。

で、まぁそんなこんな。
一年目をなんとか乗りきった私は、今度は新しく入ってくる一年生の学年を担当することになった。なんのご縁か、またリヴァイ先生が担任をするクラスの副担任。しかも三日前に貰った名簿を見れば、またもや見知った名前があるではないか。しかも人類の希望とか言われた彼だ。私が死んだのがウォール・シーナで女型の巨人を捕まえようとした時だから、そのあと本当に彼が希望となったのかは知らないけれど。重要人物であったのには、変わりない。


「お前、他クラスの名簿は見たか?」
「え?見てないですよ?」
「クソが…エレン・イェーガーがいるってことは、その同期がいる可能性も高ぇってことだろ」
「あ」


そりゃ気付かなかったわ、と思っていれば、リヴァイ先生が他クラスの名簿らしき紙を渡してくる。104期のことをよく知ってたわけじゃないが……アルミン・アルレルト。ミカサ・アッカーマン。アニ・レオンハート……この辺は、わかる、ぞ。


「めちゃめちゃオンパレードじゃないですか!」
「お前は知らねぇだろうが、104期は色々あった……その中心人物が、揃ってやがる」
「ええええええ」
「うちのクラスにもいるぞ。ジャン・キルシュタイン、マルコ・ポッド……この二人もエレンと同期だ」
「うわ全然知らね」
「だろうな」


でもリヴァイ先生がわかるってことは、少なくとも私より長生きした子たちなんだろうな〜。なんて呟いたら、マルコ・ポッドはトロスト区で死んだからお前より前だとか言われた。それなら訓練兵だ。何で知ってるの、流石兵長としか言い様がない。
まぁ、何はともあれ。


「今年が、とても楽しみっすねー」
「…まず仕事しろ、お前は」
「はぁい」


――もしかしたら全部、夢なんじゃないかと思う時がある。
巨人の腹の中で、気を失いながら、幸せな夢を見ているんじゃないかと思う時がある。

でももしそうなら。

前世の、あるいは今の私が。望んだ世界がここなんだろうなと、私は今日も噛み締めるのです。
- 28 -
  •