分かりきったことを確認するのは嫌いだ。面倒くさいし、楽しくないし、苦痛でしかない。
一糸乱れぬお団子を揺らし、赤い布が宙を舞う。剣の軌道に続き薄緑の閃光が走ると、時間差で最後のオートマタが崩れ落ちた。
日本の特異点で獲得した新しい霊衣、サイケデリック流離譚。普段の霊衣とは違い布面積が多く、層になったスカートは足首まであったが、牛若丸の戦闘力は何一つ変わっていなかった。計測器の数値が、それを如実に表している。
「いかがですか、苗字殿。数値のほどは!」
「多少ズレはあるけど誤差の範囲だ。大丈夫だろ」
「ほんとですか!?」
「数字は嘘つかないぞ」
シミュレーション室から出てきた牛若丸は、結果を聞くなり元気を取り戻した。
服を変えてもサーヴァントの出力は衰えない。そんなの他の英霊を見れば明らかだろうに、しょぼくれた顔をする牛若丸に計測してほしいと頼まれた俺は、何一つ反論できずに承諾してしまった。
「では、この格好でもマスター殿のお役に立てるのですね!安心いたしました!」
「……良かったな」
「これも苗字殿の協力があってこそ!誠に感謝いたします!」
「わかったから行った行った。ついでに藤丸君誘って来い。良さげなレイシフト先見つけとくから」
「ありがとうございます!では!」
言いながら、牛若丸は遠ざかっていく。綺麗な服で、無邪気な心で、誰かのために俺を取り残す。
「……報われないな、俺もお前も」
無知なままでいられたら、もし俺がマスターだったら、なんて仮定してしまう虚しさも、少しは紛れてくれるだろうに。