「人魚姫って貝なのかな」
「突然何を言い出すのかと思えば退屈そうな話が聞こえてきましたが尋ねて差し上げます。突然何を仰るのですか?」
「キアラさん暑さにやられてない?日陰だし潮風もあるけど水分補給はちゃんとしてね」
「お気遣い感謝します。ですがその言葉、そっくりそのまま返して差し上げますわ。熱中症で意識が朦朧としていなければ人魚姫と貝が同一だなんて言葉出てくるはずがありませんもの」
「いや、急に思い出したんだよ。貝殻がしゅわしゅわ溶ける映像があってさ……どこで見たんだっけ?小学校だか中学校の理科で習ったやつ」
「私が答えるとでも?」
「貝殻は炭酸カルシウムに溶ける?炭酸カルシウムだから溶けるんだっけ?とにかく、貝は何かかけたら溶けちゃうんだよね。原型がなくなるくらい。なんか人魚姫のラストと似てるなって思って」
「……はぁ、つまらない人。あなたも『ずっと海にいれば死なずに済んだのに』と笑うのですか?」
「違うよ。ただ似てるなって思っただけ。外の世界に憧れる気持ちを否定したいわけじゃない」
「……確かに、泡は溶けるものではなく消えるもの。現在の常識では貝の方が正しいのかもしれませんね。……まあ、あの人がそこまで考えていたとは思えませんが」
「後で聞いてみようよ。実は貝が溶けるのを知って結末を決めたかもしれないよ?」
「一人でご自由に。ですが人魚が貝だとしたら、人魚の力を得た私もいつか貝のように溶けてしまうかも……そのときは救いの手をお待ちしておりますね、マスター?」
「あはは、大丈夫だよ。キアラさんしぶといし」
「まあ!私の手のひらで幻を見たいようですわね?」

8/17

INDEX
TOP