夕焼けが障子を照らし、色褪せた畳に格子状の影を落とす。その鮮烈な光とは対照的に、埃っぽい室内は橙に濃紺を混ぜたような夜の気配に満ちていた。
障子の向こうでは、ひぐらしが夏の終わりを知らせている。それ以外の音は皆無で、自分とひぐらしを残して全ての生き物が消滅したような気さえした。
夢だと、勘が告げる。しかし誰の夢だろう?くたびれた和室の感じは、蓬莱の特異点でねじる少女と遭遇した場所に似ている。けれど、あの部屋はもっと暗かった。天気だけではどうにもならない、廃墟のような寂れた空気があった。
光は何かを見守るように、導くように狭い室内を照らしている。
導かれるように障子の前に立った。思っていたより夕焼けが眩しくて、視界がぼやけるくらい目を細める。しかし夏の終わりの太陽は、もう肌を焼くことはなかった。代わりに滲むような熱を与え、溶かすように体を温める。
懐かしいような、それでいて恐ろしい気持ちになるのは蓬莱のホラー体験のせいだろうか。それとも日本人特有のノスタルジーがそうさせるだけだろうか。どちらも腑に落ちなくて、障子に手をかけた。
ひぐらしの鳴き声が大きくなる。
大切な後輩に、名前を呼ばれた気がした。