2部6章ネタバレ


 先程マスターに渡された靴を、バーヴァンシーは無感動に見つめていた。
 蓋を開ければ、入っていたのは麦わら素材のヒールに赤いストラップが映える厚底サンダル。一足手に取って360度観察しながら、マスターの言葉を思い出す。

「これから夏の特異点が来ると思うからさ。ビーチに行くときにぴったりだと思う」

 しかしバーヴァンシーからすればそんなこと知ったことではない。自分が履きたいものは自分で決めるし、「夏」なんて妖精國にはなかったことを勝手に心配されても吐き気がするだけだ。

「……うぜぇ」

 吐き捨てるように言ってみる。自分の服を天気に振り回されるなんて、想像するだけで不愉快だ。そもそもこの靴はヒールの高さが物足りないし、麦わらの色は地味だし、ぶっちゃけ及第点にも及ばない。好みじゃない靴なんて誰が履くかよ。

 けれど、観賞用と考えればコレクションに加えてやってもいいと思わなくもない。あのダサい礼装ばかり着ているマスターが、ちまちま作り上げたという功績を認めて──ではなく、製作期間にマスターを誘って悉く断られたサーヴァント達を思い出すと滑稽で笑ってしまうからだ。

 部屋の一角に飾ると、一つだけ地味だから変に浮いていた。ダサいけど、センスがないマスターにお似合いだ。

「ま、気が向いたら履いてやるよ。アンタの葬式とかな」

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