高校生設定


 コンビニを出た途端、湿気を孕んだ熱が全身を覆った。強めの冷房で引っ込んだ汗が再び肌を湿らせ、軒下の日陰から一歩踏み出すのも億劫になる。隣を見上げると同じことを思ったのか、うげっと言いたげな横顔があった。

「あぢぃー……」
「なんか暑さ増してない?カフェにすればよかった……」
「むりむり、この暑さじゃ歩けねぇって。この前の靴擦れ治ってないんだろ?」
「ちりょーちゅーでーす」
「うわ、今のすげー馬鹿っぽい」
「IQがた落ちしたわ」

 つ、と腕に何かが伝う感覚で目線を落とす。冷たい容器は外気のせいでびっしり水滴をつけていて、それが手を通して腕に流れていた。

 ぽた、ぽた。黒いシミを作りながら、炎天下の歩道を並んで歩く。細長いスプーンでつつくと、綿あめみたいに柔らかそうな氷は簡単に崩れた。
 色のついた部分をちょっとだけ、2対8くらいの割合で掬って口に入れる。氷はひやりとした温度と味を口の中に残して、溶けていった。

「うまー」

 冷たさとおいしさで、暑さへの不快感が和らぐ。華やかなオレンジ色のソースに紛れた四角い果肉をつつけば、まだ凍っているのか固い音がした。

「マンゴーもうまそうだな」
「ん、」
「サンキュ。……あー、俺いちごの方がいいな」
「人の食べといて文句言うな……すっぱ!これラズベリー入ってるじゃん」
「えぇ、全然味しなかったぜ?」
「でもここ」

 水滴を拭って原材料を指差す。背中を丸めて覗き込んだ御手杵は「ほんとだ」と容器を受け取った。帰ってきたマンゴー味を出迎え、口直しの一口。うん、おいしい。

「……どうしたの御手杵。食べないと溶けるよ?」
「いや、マンゴー味のガムでも買っとけば良かったなって」
「?マンゴーの特訓でもするの?」
「それいいな!苗字はラズベリーに慣れてくれ」
「やらないよ、お互い地獄じゃん!」

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