滝のような雨が空から垂直に降り注ぐ。屋根にぶつかった雨粒は音を立て、他の雫と合流して縁から滴る。屋根の向こうでは僅かなへこみに流れ集まり、大きな水たまりをいくつも作っていた。
あの中に入ったらどうなるだろう。雨粒の何倍も大きい靴を深そうなところに沈めたら。
底で微睡む泥が巻き上がって、透明な水たまりが茶色に濁る。礼装だから靴下が濡れることはない。でも汚れた靴を見たら、きっとベディヴィエールは代わりの靴を用意してくれる。座る私の前に片膝をついて、持って来た靴を置く。それは別の礼装じゃなくて、舞踏会に行くような綺麗なヒールだ。ベディヴィエールはガラスの工芸品を扱うように私の足を取って、無言でヒールを履かせる。礼装に不釣り合いなそれが私の一部になったら、エスコートするように手を差し出す。私はベディヴィエールの手を取って立ち上がる。そして全速力で走るのだ。どこまでも、一歩でも遠くを目指して。何かから逃げるように、決して追い付かれないように。でも雨が酷くて、結局二人してずぶ濡れになりながら、雨宿りができそうな場所に駆け込む。
「また濡れてしまいましたね」
長い髪を手で絞りながらベディヴィエールが言う。その視線は私の靴に向けられていた。